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【中流危機】GDP世界4位に転落が確実となった日本経済 人的資本が失われた日本の捲土重来のカギとは

日本経済の復活には何が必要か(イメージ)

日本経済の復活には何が必要か(イメージ)

 かつては世界で大きな存在感を見せていた日本経済だが、昨今はその凋落を指摘されることも多い。話題の新刊『中流危機』(NHKスペシャル取材班・著/講談社現代新書)を、経済アナリスト・森永卓郎氏が読み解く。

『中流危機』(NHKスペシャル取材班・著/講談社現代新書)

『中流危機』(NHKスペシャル取材班・著/講談社現代新書)

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 日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位に転落するのが確実となった。その最大の原因は、サラリーマンの没落だろう。本書によると、全世帯の所得分布の中央値は1994年の505万円から2019年には374万円に減少している。中流が没落しただけでなく、税金や社会保険料の負担増で、家計の可処分所得は、この30年で20%も減少しているのだ。その結果、かつて「一億総中流」と言われた日本人の意識も、過半数が「中流以下」ということになってしまった。

 なぜこんなことが起きたのか。本書は現場への取材を中心に原因を探っていく。結論は、人的資本が失われたということだ。リストラによって企業から技術者が流出し、非正社員を大幅に増やしたことで、そもそも技術が蓄積しない労働者が増えてしまった。だから、今後の日本経済復活のためには「リスキリング」が大切だと本書は訴える。働く人が学び直して、デジタル技術などを身に着けることが捲土重来のカギになるというのだ。

 確かに人材投資の国際比較をみると、日本は極端に少ないことが分かる。しかし、日本企業が人材投資をしてこなかったわけではない。欧米と違い、企業内のオン・ザ・ジョブ・トレーニングを徹底してやってきたのだ。そもそも、技術の蓄積なしに、日本が、高度経済成長を通じて、世界一のモノづくり大国になれたはずがないのだ。

 やはり、日本経済の転落は、企業が社員を大切にしなくなったことが真の原因ではないだろうか。その意味で、本書の最後がオランダの事例で結ばれているところは、素晴らしいと思う。

 オランダは、日本以上に労働者保護の強い国だ。リストラや賃下げは、厳しく制限されている。それでも高い生産性を誇るのは、正社員と非正社員の差別が、時給にしろ、社会保険制度にしろ、一切ないからだ。だから企業の都合ではなく、働く人本位の経済社会制度に変えることで、真面目で器用な日本人は、再び世界一の技術水準を取り戻せる気がするのだ。

※週刊ポスト2023年12月1日号

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