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【高齢者へのトリプルパンチ】所得減、年金減に加え医療・介護費負担増も 「全世代型社会保障」が幻想に過ぎない理由

「既存の枠内で微修正」からの転換を

 まず知るべきは、社会保障というのはその国の経済力以上のことはできないという点である。日本の場合、人口減少によって人手が減り、経済的な陰りが生じてきている。それが社会保障を危機的な状況に追い込む根本原因となっているのである。こうした現実に目を閉じて、既存の社会保障制度の枠内で微修正を図っていても展望は開けないだろう。

 現状を打開し、社会保障制度の縮小を最低限で食い止めるには、最終的には人口が減っても力強く経済が成長する状況を作り出すしかない。逆に言うならば、経済成長を実現できなければ現行制度の大枠を維持できず、適用範囲の大幅縮小をはじめとして社会保障の姿を大きく変えざるを得なくなるということだ。

 企業の経営モデルのみならず、国民の消費行動を含めた社会構造の大転換が求められる。今後の社会保障改革は、日本経済の動向によって大きく変わってくる。

(了。前編から読む

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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