キャリア

「タワマンに住んで私立中学に通わせる」という消費行動は富裕層のものか 日高屋でビールを飲み「娘の学費に年間100万円」とこぼす父親の実像

共働き夫婦が無理をすればタワマンと中学受験に手が届く

 では、東京でタワーマンションを買って子どもを中学受験させるにはどの程度の年収が必要か。

 現在、正社員の平均年収は先にも述べたように男性が584万円、女性は407万円だ(前述の令和4年国税局調査)。合わせて約1000万円だ。夫婦でペアローンを組めば、6000万円ほど借りられるので、タワーマンションも買えただろう。今はマンション価格が上がっているが、10年前はもっと安かったのだから。

 一方、教育費はどうか。中学受験対策や受験費用には300万円かかり、私立中高に通うとなると学費はトータルで600万円ほど。これぐらいならどうにかなるという家庭も多いのではないか。学費を年間100万円と多めに試算したが、人気の進学校の頌栄は年間55万9800円、攻玉社は59万2000円。これらの学校は学習の面倒見がいいから、うまくいけば高校1年生ぐらいまでは塾なしで済み、想像よりは経済的な負担は大きくない。

先日、中華料理チェーン「日高屋」の新宿の店舗で、サラリーマンらしき40代ぐらいの男性二人組が子どもの話をしていた。そのうちの一人は娘を私立の中高一貫校に通わせているといい、「年間100万円かかる。奥さんは身体が辛いから会社員を辞めてパートタイマーになりたいといっているけど、学費を考えると頑張って続けてもらわないと。マンションのローンもあるし」とも話していた。

 ご存じのように日高屋は都心でも安く食事をしたり、酒が飲めたりするチェーン店だ。そういう店で仕事の帰りに同僚と一杯飲むのは実に庶民的な行動であり、これが中学受験をさせる父親の実像の一つなのではないか。夫婦で正社員として働いていたら、庶民でもタワーマンションを買って、子どもを中学受験をさせることは不可能ではない。

 ウェブなどで語られる富裕層的なライフスタイル「タワマンに住んで子どもを中学受験させる」は庶民でも可能なものなのだ。ただ、庶民すべてが手に入れられるものではない。次回はタワーマンションに住んで中学受験をさせられるのは、庶民の中で、どれぐらいの位置にいるのかを検証したい。

第3回につづく第1回から読む

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)では小説『ボリュゾっていうな!~ギャルママが挑む“知識ゼロ”からの中学受験ノベル~』を連載。

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