田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本株急騰を横目に年初から韓国株が低迷 長期的にも「中国の韓国離れ」が顕著で苦境に

年初から下落基調が続く韓国総合株価指数の被足チャート(TradingViewより)

年初から下落基調が続く韓国総合株価指数の被足チャート(TradingViewより)

日本とは基礎的条件が違う。韓国固有の弱点

 中国経済の高成長を頼みに輸出を大きなエンジンとして経済を発展させてきた韓国だが、足元では中国への輸出が鈍化する一方、中国からの輸入に国内市場を侵食される状況に陥りつつあるようだ。

 中国国内において、テレビ、スマホ、あるいは自動車が、中国企業によって淘汰され、売れなくなってきた。韓国の主力製品である半導体に関しても、中国は、米国からの輸出規制を跳ね返そうと、国家を挙げて産業育成に取り組んでいる。この分野でもいつまでも韓国が優位を保てる保障はない。

 世界は絶えず進化している。イノベーションにおいて中国を凌駕できるのであれば、韓国経済の行く末にはまだ希望が持てるのだが、どうだろうか。

 AI、新エネルギー自動車や、それらを融合させた自動運転などで、中国は米国とともに世界の最先端を競い合っている。これらの分野において、韓国が米中に打ち勝つのは非常に厳しい。

 韓国は日本とは基礎的条件が違う。資源に乏しいといった弱点は同じだろうが、さらに国内市場が小さいといった弱点が韓国経済に重くのしかかっている。

対米従属からの離脱、中国依存への回帰のリスク

 バイデン政権は、米国が中心となり、同盟国を巻き込み、対中包囲網を作ろうとしている。デカップリングは無理だとしても、少しでもデリスキングを進めたいと考えているようだ。しかし、それはあくまで米国産業、米国企業の復活を目指すもので、中国企業の代わりに韓国企業を発展させようということではない。さらに、円安により息を吹き返しつつある日本企業や、政策的に米国から重視されそうな台湾企業との激しい競争にさらされそうだ。

 仮にトランプ氏が次期大統領に選ばれるようなことになれば、米国第一主義の徹底、同盟国軽視となりかねない。そうなれば、対中包囲網さえ、梯子を外されかねない。

 韓国にとって、まだ十分な資本力、技術的な優位性を保っている間に、中国投資を拡大し、中国企業との合弁を積極化させ、中国の国内市場にしっかりと根を張ったほうが、経済発展には明らかに有利ではないだろうか。

 経済の先行きに敏感な投資家たちのコンセンサスで動く株価は経済の先行きを見通すための重要な指標の一つである。株価低迷は韓国の対米従属からの離脱、中国依存への回帰のリスクが高まっていることを示す兆候なのかもしれない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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