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斎藤幸平氏が「SDGsは“大衆のアヘン”」と断じるワケ 「マイバッグ・マイボトルを持っても地球規模の問題には対処できない」

SDGsが掲げる17の目標

SDGsが掲げる17の目標

SDGsは「大衆のアヘン」である

 こうした動きについて、SDGsを“大衆のアヘン”と強烈な言葉で一蹴するのは、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授の斎藤幸平さんだ。

「個々の取り組みを全否定するわけではありません。とはいえ意味があるかと問われれば、はっきりとないと言えます。個人レベルで、マイバッグを持ち、プラスチック製のストローを使わないようにし、マイボトルを持って、フードロスをなくそうとブロッコリーを芯まで食べても地球規模の問題には対処できません」

 私たちを取り巻く問題は、想像を超えて危機的状況に直面していると続ける。

「環境問題ひとつとっても、昨年は世界の平均気温が観測史上最高を記録し、日常生活でも環境の変化を感じる機会が増えました。温暖化問題に本気で向き合うには、2030年までに温室効果ガスの排出量を約半分に抑えて、2050年には実質ゼロにするなど、極めて短期間で減らさなければいけません。そのためにはいまのやり方はまったく不充分の、やったふり。

 今後、気候変動だけでなく、予測不可能な災害やパンデミック紛争によって、経済格差はもっと広がり貧困問題も深刻化するでしょう。現状のような取り組みでは、“持続可能な社会”の実現は絶望的です」(斎藤さん・以下同)

 わずかな取り組みでも、毎日コツコツと続けていれば地球の未来につながるのではないか。そう私たちが信じて行っていることは、「無意味ばかりか有害である」と斎藤さんは踏み込む。

「SDGsに潜む大きな問題、そして危険性は、SDGsという言葉が独り歩きして“やったつもり”になることです。たとえば、着なくなった服をリサイクルボックスで回収してもらうと環境にいいことをした気持ちになります。“地球にやさしい”“環境保護に貢献している”と満足し、それ以上の行動をとらなくなってしまう。大切なのは不要な消費を控えることなのに、不要になった服をリサイクルしたことで罪悪感が消えて新しい服を買う人は少なくありません。マイバッグも、ひとつあれば充分なのにいくつものバッグをコレクションしている。

 SDGsという甘い言葉に一時の許しを得て、問題の本質から目を背けて解決に逆行する行為を続けてしまう。SDGsはまさに、大衆にとって現代の“アヘン”です」

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