清三氏の母は佐治信忠会長の腹違いの妹。父は世界的チェリストの堤剛氏。清三氏はもともと堤姓だったが、2015年に祖父にあたる故・佐治敬三氏の妻(清三氏の祖母)の養子となり、佐治姓に変わった。信忠会長の「甥」である清三氏は、養子縁組で「弟」になったわけだ。
「SUNTORY」鳥井・佐治家
家系図の通り、これまで同社社長は創業家の鳥井・佐治両家が“たすき掛け”で担ってきた。
今回、役員となった佐治清三氏は、実子のいない信忠会長の後を継ぐ“佐治家の跡取り”となり、将来の経営トップ候補となるか──節目の年での役員就任は同社にとって大きな動きだ。
「文化的教養のある方」
突如として役員に抜擢されたように見える清三氏は、創業家の資産管理会社である寿不動産の大株主にも名を連ねている。そのキャリアは一風変わっていて、社内でも直接の接点がなければ「詳しく知らない」という社員が多いようだ。
米国の大学を卒業した清三氏は2010年に中途でサントリーに入社した後、ウイスキーのブレンドの配合を決める「ブレンダー室」にも所属していた。別の社員が言う。
「新卒で毎年100人以上が採用されますが、ブレンダー室やウイスキー関連の部署に配属されることは多くはありません。ブレンダー室は特殊な部署で、最高位とされる『マスターブレンダー』の称号を得たのは初代社長(鳥井信治郎氏)、2代目社長(佐治敬三氏)、そして鳥井信吾副会長という創業家の3人のみ。“神の舌”を持つ人しかなれないと言われます」
関係者によると、清三氏はブレンダー室、ウイスキー事業部などを経験し、MBC研究所へとキャリアを重ねてきたという。前出・河野氏が言う。
「現在、清三氏が所長を兼務するMBC開発研究所は鳥井副社長が立ち上げた部署で、グループのモノづくり価値、ブランド価値の向上を担う。マスターブレンダーの後継者としても名前の挙がる清三氏が、研究所を引き継いだ格好でしょう」