政権浮揚にもつながりやすい海外での華やかな首脳外交。しかし、石破茂首相は、各国首脳が会場内で活発に交流する中で、 “社交下手”な一面も露呈している。一方で内政面でも、朝令暮改や手のひら返しを繰り返し、早くも“機能不全”に陥っているとの指摘もある。経営コンサルタントの大前研一氏によれば、その象徴は新しい看板を次々に掲げ、屋上屋を架すだけの“ダメ組織”にあるという。最新刊『新版 第4の波 AI・スマホ革命の本質』を上梓した大前氏が解説する。
* * *
なぜ日本政府は、目の前の現実に対して、有効な政策を打てないのか。個々の政治家の資質に帰するのは簡単だが、今の政治制度や組織そのものが旧態依然のままで、全く新しい時代の要請に応えられていないことこそ深刻な問題だろう。
今の政府がいかに“機能不全”を起こしているかは、閣僚を見ればよくわかる。
2024年10月に発足した石破茂内閣は、戦後最短の就任8日後に衆議院を解散して総選挙に打って出たが、新閣僚の平均年齢は63.6歳と高く、若手ゼロ、女性はたった2人で、やる気も新鮮味も感じられず、「納得」も「共感」もできない内閣となった(第2次石破内閣では落選議員らに代わって40代を2人起用)。
その中心にいる石破首相自身、自民党総裁選挙の時に「国民が判断する材料を提供するのは新しい首相の責任だ」として早期解散に否定的な考えを示していたにもかかわらず、いざ首相に就任すると、その主張を手のひら返しする始末である。裏金議員の追及や金融正常化の旗も早々に降ろして、“朝令暮改総理”“首相豹変”などと揶揄されている。こんな体たらくの石破政権が続く限り、政府の“機能不全”が続くことだけは間違いない。
こうした事態は、今に始まったことではない。たとえば、2022年8月の第2次岸田文雄改造内閣では、新たな経済政策の目玉となる2つの担当大臣が鳴り物入りで新設された。スタートアップ担当大臣とGX(グリーントランスフォーメーション)実行推進担当大臣がそれだが、これはどちらも笑止千万の“担当”大臣であり、そもそも「大臣とは何か」という原点が問われるべき人事だと思う。