JAL初のCA出身の女性社長として注目された鳥取三津子氏
ナショナルフラッグキャリアの信頼が揺らいでいる。日本航空(JAL)初の客室乗務員(CA)出身の女性社長として注目された鳥取三津子氏だが、1月24日、国土交通省で記者団に囲まれてこう述べた。
「企業文化として、身内を必要以上に守り、おかしいことをおかしいと言えない状況がある」
発端は昨年12月に起きたパイロットの飲酒問題だ。豪メルボルン発成田行きの便の機長と副機長が、搭乗前日に規定量を大幅に超える酒を飲んだ。出発前にアルコールが検出され、同便は約3時間遅れで飛び立った。
「現場のCAから機長らの様子がおかしいと声が上がったのに聞き入れられなかった。機長と副機長は口裏を合わせ、実際に飲んだ量よりも少なく会社に報告したようです」(全国紙経済部記者)
問題は現場の話にとどまらなかった。JALが国交省に提出した報告書によると、経営陣らは当初、報告は不要の事案だと判断し、国交省への報告が遅れていたことが判明。ずさんな危機管理意識が顕わになった。
元JALの国際線チーフパーサーで航空評論家の秀島一生氏は「現場叩き上げの人物を社長にすることにこだわりすぎて、全体を見られる経営のプロがいない」と指摘する。
2010年の経営破綻後、JALを率いたのは整備士や操縦士のいわゆる現場出身者。会長として同社の経営再建に尽力した故・稲盛和夫氏の「現場主義」がその背景にある。その結果、官僚的といわれた組織は生まれ変わり、業績もV字回復した。
しかし、秀島氏は「近年は『現場を大事にしている』という雰囲気だけで、実際には他の現場に口が出せない、官僚的な縦割り意識が社内に広がっているのではないか」と危惧する。
こうした指摘について、JALは「そのような認識はございません。引き続き、所属部署にかかわらず社員が声をあげやすい環境づくりに努めてまいります」(広報部)と回答。しかし、今回の事案は同社でアルコールを巡る不適切事案が相次いでいる中で発生した。JALは「信頼を損ねてしまったことを極めて重く受け止め、今度こそ、二度とアルコール問題を起こさないという強い思いを持って、経営主導で全力で再発防止に取り組んでまいります」(同前)としている。
飲酒した機長に物申した後輩CAのように、鳥取社長も経営トップとしておかしいことをおかしいと言えるのか。手腕が試される。
※週刊ポスト2025年2月14・21日号