三菱自動車はホンダと日産が設立する持ち株会社の枠組みには「入らない方向で検討を進めている」という(時事通信フォト)
昨年末から続く日産とホンダの経営統合協議。ここにきて注目されるのが、日産が筆頭株主となっている三菱自動車の動向だ。統合に加わり「3社連合」となるのか、それとも距離を取るのか──自動車業界に精通するジャーナリスト・井上久男氏がレポートする。【全3回の第1回。全文を読む】
「御三家」が取締役に
1月末、三菱自動車はホンダと日産が設立する持ち株会社の枠組みには「入らない方向で検討を進めている」と報じられた。
昨年12月23日、ホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長が経営統合交渉入りを発表した会見に同席した三菱の加藤隆雄社長は「2025年1月末を目途に経営統合への参画・関与の可能性に関する検討結果を出すことを目指す」と説明していた。
しかし、実はその時点で、「三菱の腹のうちは経営統合には加わらないが、3社連合は継続し、中身のあるものに発展させていく」(関係者)との方針がほぼ固まっていた。
3社はすでに2024年8月1日、電気自動車(EV)などの領域で協業していく方針を示しており、この関係を発展させるという意味だ。三菱自動車が経営統合に加わらない理由は、その資本構成や取締役会の構成から見えてくる。
三菱の筆頭株主は27%の資本を持つ日産で、2位が20%の三菱商事。取締役会メンバーには、日産から坂本秀行副社長、田川丈二専務、幾島剛彦専務が、商事からは垣内威彦会長が名を連ね、日産は商事の3倍の取締役を送り込んでいる。
ところが、三菱グループという観点で見ると、取締役数は日産より1人上回る。三菱重工業の宮永俊一会長、三菱UFJフィナンシャル・グループの三毛兼承会長、元三菱商事法務部長の稲田仁士氏の3人が取締役に就いているからだ。この三菱「御三家」の経営トップが三菱自動車の取締役に就いていることから見ても、グループとしての影響力は小さくない。