「自分は詐欺なんてやってないから、話せばわかるだろう」
小倉さんが当時の心境を振り返る。
「最初は、“マジかよ。一体何なんだよ。楽天銀行に口座なんか持ってないよ”と思ったけど、すぐに、“待てよ。楽天カードなら持っているぞ”と考え直しました。そのカードから個人情報が漏れて、何者かに偽装されたのかもしれないと。自分は詐欺なんてやってないから、話せばわかるだろう。そう思って、家の外に出て電話を続けることにしました」
家から徒歩数分の駐車場に移動し自家用車の車中で1人になった旨を伝えると、相手は「あなたのカードが宮崎県で見つかったので、今から宮崎県警の担当者に引き継ぎます。そちらの担当者と詳しい話をしてください」と言って一旦電話を切った。
数分後、小倉さんのスマホに着信があり、女性の声で「宮崎県警のシマダと申します」と自己紹介された。シマダはオニヅカと同様のマネーロンダリング詐欺を説明後、「今からLINE電話を使って取り調べを行っていきます」と話してからLINEのIDを伝えてよこし、小倉さんをLINE電話に誘導した。
およそ5分すると小倉さんのLINE電話にシマダから着信があり、「ビデオをオンにしてください」との指示があった。言われた通りビデオをオンにするとLINE電話の通話画面に、警察らしき制服を着た若い女性の姿が映った。
「20代くらいの割と可愛らしい女性警官に見えたので、そこまで圧迫的なことはしてこないだろうと一時はホッとしました。彼女は首に下げたカードフォルダーに入った警察の身分証らしきものを画面に映してから、周りに他の人物がいないか確認するため、僕のスマホを一周ぐるっと回して見せることを求めました。
さらに僕のフルネームや生年月日などを確認し、『この事件は非常に大きなお金が動いたので、機密保持指定がされています。事件の情報を人に話すと刑罰の対象となり、身柄拘束の可能性があります。また、あなたが周りの人に話すことで、相手も危険な状況になります』と言われました。安堵したのも束の間でますますシリアスな状況に陥り、息をのむばかりでした」(小倉さん)