“釣り人”は釣果を出せなければ仕事を失う
こうした事例を踏まえて考えるに、仕事選びで何が重要かといえば、「仕事が多数存在するところを見つけ、その需要に乗っかり実力をつけたうえで“得意なことを仕事にする”」です。私自身は、2001年3月で広告会社を辞め、2001年12月からフリーの立場で某IT企業の仕事を開始します。そこからメルマガの執筆・編集をするようになり、ニュースサイトの編集者になります。
当時は紙メディアの方が“格上”で、新聞・雑誌の記者・編集者からは「なんでネットなんかで編集者やってるの?」と見下されていました。私は2006年からネットニュースの編集を開始しましたが、数年も経つと紙メディアの危機が叫ばれるようになってきました。こうなるとニュースサイトが雨後のタケノコのように登場してきて、その際にネットでの編集経験が豊富な者に仕事が殺到するようになるのです。
ネットニュースの編集は慣れていたし得意だったので、数多くこなせましたが、別にこの仕事に対する憧れがあったわけでもないし、好きというわけでもない。ただ、まったく苦痛ではなかったんですよね。
好きというだけで仕事を選ばない方がいいと思うんです。たとえばテレビやYouTubeの釣り番組に出てくる“釣り人”は、もちろん釣りは好きでしょうが、それ以上に腕が良く「得意」だからその仕事を続けられるわけでしょう。このとき、好きなだけでは仕事になりません。釣果を出せなければ仕事を失うわけですから。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。