新設計フレームと、スリムになったリアフレーム。リアスタイルもスッキリとして軽快感のあるデザイン。テール部分をややアップさせた形状に。キャスター角を立ててトレール量も増加。これにより、俊敏かつ安心感のあるハンドリングを実現した。シンプルで扱いやすいことから、女性やエントリー層にも人気のモデルとして親しまれてきた
バーチカルエンジンは水冷並列2気筒SOHCで排気量は900cc。最高出力65ps、最大トルク80Nmというスペックで、軽快な走りを支える
人生の締めのオートバイなら、これがいいかも
さっそく今年1月から発売がスタートした「トライアンフ・スピードツイン900」に跨がり、クラッチを握ってセルボタンを押します。900cc並列2気筒エンジンは実に軽やかに目覚めます。1980年代後半、知人が持っていたバーチカルツインモデルの「ボンネビルT100」とは少し違う印象です。当時のエンジン音はもっとパンチ、つまりうるさかったしエンジンの鼓動も強烈だったと思います。当然、40年ほど経過しているのですからエンジン音も振動もずいぶんと大人しく、現代風になっています。色々な規制がまさに足かせとなって、あくまでも我々世代にとってよき時代の迫力は希薄になっています。
だからと言ってバーチカルツインの楽しさまでも失われたわけではありません。ちょっぴり専門的ですが270度クランクによる不等間隔爆発は「ダ・ダン、ダ・ダン、ダ・ダン……」といったパルス感(脈拍)と、なんとも心地いいサウンドを発しながら、速度を上げていきます。その際の振動にも不快な感じはまったくありません。
エンジンの始動に従い太いトルクで路面をしっかりと蹴り出す様は、まさに乗馬のような力強さがあります。決して4気筒のようなスムーズさではありませんが、少々懐かしい感じの鼓動感は、まさしくオートバイに乗って駆け抜けているフィールなのです。この心地よさは街中を走っていても高速を流していても、ワインディングをヒラリヒラリと駆け抜けていても、つねに感じることができます。
そして新型のスピードツイン900のライディングを、さらに心地よくしているのは、スリムさです。シート高は780mmと、決して低くはないというか、むしろ従来モデルより15mm高めですが、信号待ちなどでの足着きが楽なのです。これはシート周りをスリムにしたことで実現した利点です。またハンドル位置が少し高めであり、背筋を伸ばした自然なライディングポジションが取れるのです。両膝で少しだけえぐり込まれたガソリンタンクを挟むと、これまた自然なニーグリップが可能になり、車体をヒラリヒラリと操ることができます。バイクの操作感のどこにも“力づく”のところがないのです。すべてがナチュラルにしてストレスフリー。その軽快なる扱いやすさは「そろそろ人生最後のオートバイでも買うか」などと考えているシニアライダー、さらには「久し振りにバイクでも」と考えているリターンライダーにはぴったりの1台だと思います。
もちろんひとクラス上のスピードツイン1200も悪くありませんが、価格は184万9000円(スピードツイン1200RSは222万9000円)。一方の900は新型のスピードツインは119万9000円という気軽さ。トライアンフならでは魅力はこちらでも十分に堪能できることを考えると、またしても「バイクが欲しい」という欲望が頭をもたげてきます。