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キャリア
“推薦6割”時代の付属校進学という選択

女子大不人気の中、日本女子や聖心の付属校が“総合型選抜の強豪校”になっているのはなぜか 推薦入試で武器になる「国語と英語の読み書き」を鍛えるカリキュラム

大学入学者数別で見ると、私立大学では6割超、大学全体でも5割超が総合型選抜あるいは学校推薦型選抜となっている(令和六年度・文部科学省委託調査「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」より)

大学入学者数別で見ると、私立大学では6割超、大学全体でも5割超が総合型選抜あるいは学校推薦型選抜となっている(令和六年度・文部科学省委託調査「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」より)

女子大付属が総合型選抜の強豪校になっている

 一方で他の大学への進学という意味でも付属校は魅力を増している側面がある。

 というのも、今は「総合型選抜」というルートがあるからだ。第1回記事で紹介した品川区にある立教の系列女子校・香蘭は、64%が立教に進学し、残りは他に進む。一般選抜組が15%、総合型選抜や学校推薦型選抜が17%。このように、外部受験をおこなう生徒の多くが、内部推薦以外の推薦入試を利用して、他の大学に進学をしている。今、女子付属校から総合型選抜で他大に進学する生徒は増えている。

 たとえば、日本女子大付属高校や聖心女子学院高校といった名門女子大の付属校の生徒たちも総合型選抜で他の大学に進学するケースが目立つ。

 日本女子大付属は、併願制度があり、日本女子大学にない学部(医学、歯学、薬学、看護学、獣医、法学部、芸術、体育)を受験する場合、内部推薦の資格を保持したまま他の大学を受験できる。つまり、他の大学を受験して残念な結果になっても日本女子大に進学ができる。

 また、聖心女子学院は2024年の卒業生の総数が89名。そのうち、55名が聖心女子大学以外へ進み、内28名が総合型選抜と公募制推薦で進学している。

 聖心女子学院も日本女子大付属も、一般選抜対策に注力している学校ではない。これらの女子大付属中学に娘を入学させた保護者はいう。

「(外部の)大学受験を受けさせる予定ですが、あまりにも学習面がゆるやかなので、中学1年から塾に通わせています。高校受験をさせて、都立高校に行かせようかと考えています。都立の上位校はしっかりと大学受験対策もしてくれます」

 大学受験に向けては、5教科の学力を上げていくためのカリキュラムが必要だが、その部分は進学校に比べてゆるやかになっているようだ。

 しかしだ。これらの学校は現代文の読み書きや英語の教育のレベルは非常に高いレベルにある。

読解力が鍛え上げられている女子大付属の生徒たち

 ある女子大付属校では、現代文では教科書の文章を読ませるのではなく、本を一冊読ませて、読解をさせ、それに対しての要約や考察を書かせる。聖心女子学院は英語の教科書でプログレスを採用。日本国内で使用されている英語のテキストで最も難しいとされ、難関私立校で採用されているものだ。

 この「現代文の読み書きと英語は鍛えられている」ことが総合型選抜では有利に働く。少なくとも、成成明学獨国武(成城、成蹊、明治学院、獨協、国学院、武蔵)以上の難易度の大学が総合型選抜で問うのは「学問をやる能力があるか」である。成城の総合型選抜では課題図書を読み込み、それについての筆記試験を行い、「文章が読めるか」を問い、英語の試験も課す。

 学問の基本は、文献を読んで、論文を書くことだ。「日本語の現代文の読み書き」ができないと、学問の基礎を築けない。

 大手推薦対策塾の講師は「高校3年からの対策だと間に合わないのは小論文ですね」と言い、総合型選抜専門塾AOIの広報担当で講師の松尾碧大さんは「小論文の問題はまず長文の文章を読むことが求められます。この長文読解に苦戦する生徒は多いです。読解力の対策が必要な場合は、少しでも早くから対策していくことが大切でしょう」と話す。

 高校生の読解力の低下が指摘されている中で、女子大の付属校の生徒たちは読解力が鍛え上げられている。女子大付属の高校3年の生徒はいう。

「塾で進学校の子たちと友だちになりました。高校2年で数IIIを修了していて、微分積分もしっかりやっています。学力という面ではかなわないと思う一方で、現代文を読む力と書く力は私の方が上かもしれない、とも感じています。あと、私はIELTSという英語資格試験で英検準1級相当のスコアを取っていますが、進学校の子たちでもほとんど2級ですね」

 一般選抜では進学校のカリキュラムの方が強いが、総合型選抜だと付属校のカリキュラムの方が有利になってくるのだ。

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