衛星モバイルサービスについて語った三木谷氏
「船の上でもつながる」
現在、携帯各社の人口カバー率はほぼ100%に達しているが、人口が極端に少ない離島や山岳地帯はここに含まれない。一方、地上730キロメートルで電波を送受信する衛星モバイルは日本の全国土、領海を漏れなくカバーするため、面積カバー率が100%になるのだ。
それを可能にするのが、宇宙空間に巨大なアンテナを広げるASTの衛星だ。アンテナの面積は223平方メートル。テニスコート1面分の広さである。スターリンクの衛星で使われているアンテナの36倍だ。
市販のスマホが発する電波は微弱だが、ASTの衛星はこの「巨大でパワフルな耳」で弱いシグナルを漏れなく拾い、離島や山岳地帯にあるスマホにもきちんと電波を届ける。
「船の上でスマホがつながらない、という漁師さんの悩みも解決できる」
三木谷氏は笑いながら言うが、恩恵を受けるのは漁師だけではない。海でも山でも日本の領域なら、地上のネットワークが届かないところでも通信が可能になる。つまり地震や津波、豪雨で地上の基地局が損壊しても通信できるということだ。企業や政府が衛星モバイルに強い関心を示しているのは、インフラとして強靭だからである。
次のページ:「ウクライナ軍の背骨」