「ウクライナ軍の背骨」
ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月、ロシア軍はウクライナ国内の携帯基地局を攻撃した。ウクライナ軍の目と耳を奪うためだ。ウクライナデジタル改革相のミハイル・フェドロフはツイッター(現・X)で、スペースX創業者のイーロン・マスクに支援を求めた。10時間後、マスク氏がツイッターでリプライした。
「ウクライナで(スターリンクを)使えるようにした」
直後にマスク氏はスターリンクに対応した端末数千台と、専用アンテナを大量にウクライナに送った。これでインターネットが使えるようになったウクライナ軍は、ロシアの想定を超えた反撃を開始する。世界がウクライナを支持した当時、この話は美談として伝えられたが、今は若干様相が違う。
3月9日、マスク氏はスターリンクについて「ウクライナ軍の背骨だ。私がこれを停止すれば、ウクライナの前線すべてが崩壊するだろう」とXに投稿した。これに対し、ウクライナの隣国ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相が「ポーランドが(ウクライナの代わりに)サービス料を支払っている。スペースXが信頼できないプロバイダーなのだと判明すれば、私たちは他のサービス供給者を探さざるを得ないだろう」と書き込んだ。
ヒートアップする二人の間に米国のマルコ・ルビオ国務長官が割って入り、「マスク氏がスターリンクを停止させると言っているわけではない。ポーランドはスターリンクについて感謝すべきだ」と両者を宥めた。