インタビューに答えるワタミ会長兼社長の渡邉美樹氏
「シフトが埋まらなかったことは一度もありません」
──サンドイッチを作るためには技術が必要だと思いますが、その点はどう対応しているのでしょうか?
「多くの方が誤解されているようですが、単発のタイミーワーカーが隙間時間にちょこちょこっと来て働く形では店が成り立つはずがありません。タイミーワーカーの教育体制を説明しましたが、調理の研修もきちんと研修店舗で実施しているので、サブウェイ世界基準を身に付けた 働き手の集団をイメージしていただきたいです。
サブウェイで働くタイミーワーカーは、サンドイッチを作る人もいれば、レジを担当する人もいます。実際には料理が好きな方、飲食業の経験がある方から『サンドイッチを作りたい』という希望は多いのですが、飲食業の経験がなくても教育・研修の後に繰り返し店舗で働くことによって熟練していきます。
現在、ランク制度をテスト中で、たとえばサンドイッチを作ることができる人を仮にAランク、レジだけを担当する人をDランクとしましょう。『この店舗にAランクの人を○人、△時~□時で欲しい』『あの店舗にDランクの人が○人必要』というように、“働き手の集団”に対して一斉に投げかける仕組みを構築しています」
──そのやり方でうまくシフトが組めるのでしょうか?
「募集をかけると、すぐ応募が集まり、だいたい10分でワークスケジュールは組み上がります。現在、1店舗あたり80~100人程度のタイミーワーカーの登録者がいますので、これまでシフトが埋まらなかったことは一度もありません。数週間後のワークスケジュールまで完全に埋まっていきます。ちなみに本社1階の今年2月にオープンした大鳥居店にはすでに100人以上のタイミーワーカーが登録し、近くの羽田空港第1ターミナル店でスタッフが足りない時には登録者に募集をかけて採用しています。大鳥居店は直営店で、羽田空港の店はフランチャイズ店ですが、こうした連携も取ることができるのです」
「2048年までに3000店舗にする」
──そもそもタイミーワーカーで店舗運営しようと考えたのはなぜですか。
「外食産業の人手不足解消と事業成長のためです。ワタミは、国内で現在約200店舗のサブウェイを23年後の2048年までに3000店舗にする構想を掲げています。そのためには直営店だけでなく、フランチャイズ店も増やしていかなければなりません。タイミーを通じたスポットワーカーの母集団を構築し、フランチャイズ店も人手不足の時にその母集団から採用していく。まずは2034年に国内1065店舗を達成するという目標を立てて、それに向かって出店ペースを加速していきたいと思っています」
──直営店の新宿西口ハルク店は、店長がタイミーの社員、従業員は全員タイミーワーカーという“フルタイミー”店舗ですが、店長までタイミーに担わせるのはなぜですか。
「店長も育成するのは、今後、店長も採用してほしいというフランチャイズ店からの要請に応えるためです。現場リーダーとしてタイミーに正社員採用された“タイミーの社員”や“サブウェイ経験タイミーワーカー”を増やし、店舗横断のネットワークを形成することで人手不足解消を図りたいと考えています」
“フルタイミー”での店舗運営は大手外食チェーン初という。飲食業界は慢性的な人手不足に直面しているが、ワタミ流タイミー活用戦略は業界全体の課題解決につながる試金石となるのか。