トランプ関税が再びホンダと日産を経営統合に向かわせる可能性
自動車産業を取り巻く環境は厳しい。日産との経営統合を検討していたホンダも2026年3月期決算の業績見通しでは最終利益が前期比70%減の2500億円になる。トランプ関税の影響で6500億円の減益要因が発生しそうなことが影響した。
ホンダの日本からの対米輸出は年間5000台程度と少ないが、日本から輸出する部品や、カナダやメキシコの生産拠点からの米国への輸出が響くと見られる。
ホンダは米国内での生産増強を目論むが、オハイオ工場などの自社の生産能力をこれ以上拡大できない状況にあるという。そうしたなか、「ホンダは日産が持つ米国内の余剰な生産拠点を活用できないか検討している」(関係筋)との情報もある。
エスピノーサ氏も「米国でホンダや三菱との協業を積極的に検討している」と説明した。すでに日産米国工場で三菱のSUVを造ることが検討されており、そうしたスキームにホンダが加わる可能性があるということだ。
トランプ関税導入による経営環境の変化が、再び、ホンダと日産を経営統合に向かわせる可能性がある。日産は、ホンダを含めた他社との戦略的なパートナーシップの構築抜きで単独で生き残ることは厳しい。
こうした戦略の構築も、エスピノーサ社長の大きな役割と言える。果たしてゴーン氏のようにV字回復させられるか。
【プロフィール】
井上久男(いのうえ・ひさお)/1964年生まれ。ジャーナリスト。大手電機メーカー勤務を経て、朝日新聞社に入社。経済部記者として自動車や電機産業を担当。2004年に独立。主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』などがある。
* * *
関連記事《日産・エスピノーサ新社長は“ゴーンの再来”か 経営再建計画「Re:Nissan」で踏み込んだリストラ計画、その先にあるホンダとの再交渉の可能性》では、窮地の日産に登場した外国人社長の改革案の詳細や、かつてのカルロス・ゴーン氏と重なる部分について、井上氏のレポート全文を公開している。
※週刊ポスト2025年6月6・13日号