全勝と14勝1敗は、その後の毎場所「8万4000円」の違いに
国技館内には優勝力士の額が32枚飾られており、うち30枚は額の最上部に「優勝」とあるなか、2021年7月場所の白鵬と11月場所の照ノ富士の2枚だけは「全勝」と書かれている。それほどまでに、15日間勝ち続ける「全勝優勝」は相撲界では名誉な記録だ。
大の里が千秋楽の1敗で逸したのは名誉だけではない。この1敗により手にできなかったマネーも大きい。全勝優勝かどうかで、手にする額の違いは大きい。
「関取以上の力士の場合、基本給とは別に『力士褒賞金』と呼ばれる手当が年6回の本場所ごとに協会から支払われる。『力士褒賞金』を算出するための基準額として設定されているのが『持ち給金』という仕組み。デビュー時の持ち給金はどの力士も3円で、1つ勝ち越すことで0.5円が加算される(10勝5敗ならプラス2.5円)。加算制のため減ることはなく、関取には持ち給金を4000倍した額が本場所ごとに支給されます。
つまり、15戦全勝の優勝なら“勝ち越し15”で持ち給金は7.5円になる加算のところ、千秋楽に1敗しての14勝1敗だと“勝ち越し13”で持ち給金はプラス6.5円になってしまう。さらに、幕内優勝による持ち給金のプラスは30円に設定されているが、これが全勝優勝なら50円が加算されていた。
結果、全勝と14勝1敗の持ち給金の違いは21円。これを4000倍すると場所ごとに8万4000円の違いとなり、年額50.4万円になる。仮に24歳の大の里が34歳まで10年間綱を張ったとすれば、今場所の結びの一番に敗れたことで、504万円を失ったことになるわけです」(協会関係者)
来場所の大の里の持ち給金は36.5円が加算されて213.5円となる。全勝優勝なら234.5円になっていたので、その「21円差」が大きな違いを生むわけだ。
しかも、豊昇龍と大の里の一番には、「懸賞」が規定の上限いっぱいの60本の懸賞旗が土俵を回った。今場所から懸賞袋に入った現金は1万円で残りは振込となったが、力士は1本あたり6万円を手にする。大の里が豊昇龍に持っていかれた懸賞は60本で360万円だ。逃した金額はさすがに大きい。
角界のカネをめぐる事情は複雑だ。関連記事『《幕内力士の収入一覧を大公開》横綱・豊昇龍は「そんなに稼げていない」実態、年収は4600万円+α、「持ち給金」「懸賞金」で横綱を上回る平幕力士も存在する複雑怪奇な給料事情』では、全幕内力士の“給金”の一覧を全公開している。