迷惑な常連客にどう対抗するか(イラスト/大野文彰)
近年、社会問題化している「カスタマーハラスメント」。店側が迷惑客を“出入り禁止”にする場合、どのようにすればいいのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
飲食店を営んでいる友人が、悪質な常連客に困っています。ほかのお客さんに絡んだり、賞味期限切れのドレッシングを大量に押し付けてきたり、店主の個人情報を店内で大声で話したりします。
店主はできるだけ穏便にすませたいそうですが、悪質な常連客を出入り禁止にする対策を教えてください。(埼玉県・58才・主婦)
【回答】
迷惑客によるカスタマーハラスメント(カスハラ)について、東京都カスハラ防止条例では「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」をカスハラと定義し、顧客に対して「就業者に対する言動に必要な注意を払うよう努める」ことを求めています。
同時に、事業主にもカスハラ防止に努め、カスハラに遭った従業員の安全を確保し、カスハラ行為の中止要請等の必要かつ適切な措置をとる努力義務を課しています。しかし、顧客の言動が、例えば暴行など何らかの具体的犯罪に該当しない限り処罰されることはありません。
飲食店は客の注文を受けて料理を出して、施設内で飲食させるサービスを提供し、客から代金の支払いを受ける役務提供取引をしています。飲食店と顧客の取引は私人間の契約です。この契約は、原則として当事者の自由な意思に基づいて結ぶことができます(契約自由の原則)。