財務省出身で自民党政調会長を務める宮沢洋一氏(時事通信フォト)
財務省の権力を語る際にかかせないのが政治家とのネットワークだ。財務省からは多くの政治家が輩出されているが、彼らの中でも自民党政調会長の宮沢洋一氏は「別格」だという。「103万円の壁」引き上げ問題でも野党は煮え湯を飲まされることになった。どのような駆け引きなら有効だったのか。元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏の著書『財務省 バカの「壁」 最強の“増税マシーン”の闇を暴く』より一部抜粋・再構成して解説する。
政界における“財務省の宣伝本部長”
税調会長の宮沢洋一氏は財務省出身で、バカの「壁」を守る最後のトリデ、まさしく「ラスボス」だ。岸田元総理は従兄弟、宮澤喜一元総理は伯父にあたり、父も祖父も官僚から政治家になっているサラブレッドである。もちろん財務省出身だけあって、減税や積極財政には後ろ向き。つまり、政界における“財務省の宣伝本部長”にほかならない。
1974年に大蔵省に入省した宮沢氏は一時期、私の上司でもあった。そんな宮沢氏が証券局総務課の企画官だったときの証券局長に、国家公務員採用上級試験(法律)首席合格、東大法学部首席卒業、司法試験首席合格を達成し「三冠王」と呼ばれた角谷正彦氏という人物がいた。
突出して頭の回転が早い角谷氏の対応に、東大卒の財務官僚が四苦八苦するなか、唯一、適切にアジャストできたのが宮沢氏だ。さらには、職員の配属先の決定、昇進、異動、研修の計画など局のキャリア人事にも関与していた。
このように、天才的な財務官僚と渡り合ってきた経験を持つ宮沢氏の愛すべき特徴は、ものすごい上から目線であること。元財務官僚の玉木雄一郎氏や現役官僚たちのことも、大したことないと見ているに違いない。このような人物を相手にするのは、まったく一苦労だ。感情論をぶつけても意味がない。徹底的に理論武装して論破するしかないのだ。