「かしわご飯」(210円)。博多うどん定番のお供(釜揚げ牧のうどん提供)
長い歴史と深い自然に彩られた故郷のため、畑中社長は毎年「寄付」を欠かさない。
「糸島の人口がさらに増えて、お客さんも増えてもらうためには、治安の良さが欠かせません。夜道が明るいと犯罪が起きにくいだろうから、街頭を設置する費用を毎年100万円ほど寄付しています。儲かった年は200万円です」
これから先に何を目標にするかと問うと、「目標が何もないので、消極的な経営者と言われるんです」と畑中社長は笑う。野心とは無縁の2代目社長が一途に目指すのは、愛する牧のうどんが「福岡のソウルフード」になることだ。
「昔の福岡人にとっては豚骨ラーメンが故郷の味でしたが、今は全国で食べられるようになりました。ソウルフードにとって大事なのは、“福岡でしか食べられない”ということ。だから東京や関東、関西まで出ていくつもりはなく、ここで育った人たちが外に出て、また福岡に帰ってきたら牧のうどんを食べてほしい。うちとしてはそれで十分かな」
誰の心のなかにも、生まれ育った土地の「食」への愛着があるはずだ。様々な思いを抱いて、故郷に帰ってきた人たちに懐かしい味を提供するのも、今の時代に地方で頑張る飲食店のひとつのあり方なのだろう。
関連記事《【物価高でも経営堅調】「牧のうどん」商社出身2代目社長が語る経営ビジョン 仕入れ値を抑える交渉術の秘密、運用益1億円を全従業員に特別ボーナスで還元したワケ》では、人口減少エリアを含む九州北部という地方限定出店ながら、売り上げを伸ばし続ける同社の経営方針について、畑中社長が詳しく語っている。
取材・文/池田道大(フリーライター)