牧のうどんでは、麺のかたさ「中」の茹で時間が30分。いつでも釜揚げを提供できるよう、常にうどんを湯がいている(釜揚げ牧のうどん提供)
東京進出や全国展開を果たす「博多うどん」チェーンが相次ぐなか、ご当地で「ビッグ3」のひとつに数えられる「牧のうどん」は九州北部以外のエリアには出店しない独自戦略を貫いている。経営の舵取りを担うのは、同社2代目社長の畑中俊弘氏。かつてはグローバル商社マン、現在は家業を継ぎローカルうどんチェーンの経営者となった畑中社長は、どのような経営ビジョンを持っているのか。フリーライターの池田道大氏が話を聞いた。【全3回の第2回。第1回から読む】
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福岡発祥のうどんブームが東京をはじめ全国に巻き起こるなか、地元密着にこだわり営業を続ける「釜揚げ牧のうどん(以下、牧のうどん)」。1973年に福岡・糸島に第1号店を開業し、現在は福岡と佐賀を中心に計18店舗を展開している。地元福岡では「資さんうどん」「ウエスト」とともに“博多うどん3強”と称される有名店だ。
物価高や人手不足による人件費高騰などで飲食店をめぐる状況は年々厳しさを増している。帝国データバンクによれば、2024年の飲食店の倒産件数は前年比16%増の894件で過去最多だった。業態別では居酒屋やラーメン店、洋食店などが多かったが、「そば・うどん店」も27件(前年は21件)と過去最多を記録した。
そんな苦境のなかでも牧のうどんの経営は堅調だ。2代目社長の畑中俊弘氏が語る。
「今は売上も客数も増えています。昨年(2024年)の6〜7月は少し赤字でしたが、みんなが頑張って盛り返しました。人口が減っている地域でも、他の飲食店がなくなるので、うちの売り上げは減るどころか増えています。『そろそろマイナスになるか?』とハラハラしながらも伸び続けているんです(笑)」(畑中社長・以下同)
地域産業の衰退が唱えられるなか、地方の小規模飲食チェーン店である同社が売上を伸ばし続ける秘訣は何だろうか。