玄界灘を望む風光明媚な糸島・二丈バイパス店(釜揚げ牧のうどん提供)
全国的な人気に火がついた「博多うどん」のなかでも「ビッグ3」のひとつに数えられる「牧のうどん」。九州北部エリアに18店を展開する同社の経営の舵取りを担うのは、元商社マンの2代目社長・畑中俊弘氏だ。世界のマーケットを知る畑中社長は、「牧のうどん」の今後の経営戦略をどう描くのか。フリーライターの池田道大氏が話を聞いた。【全3回の第3回。第1回から読む】
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「資さんうどん」「因幡うどん」など福岡発祥のうどんチェーンが次々と東京上陸を果たしてメディアを賑わせるなか、独自路線をゆく「釜揚げ牧のうどん(以下、牧のうどん)」。畑中製麺所をルーツに持つ牧のうどんは1973年に福岡・糸島に1号店をオープンし、現在は福岡や佐賀を中心に18店舗を構える。茹でたての麺を水で締めず柔らかいまま提供する「釜揚げスタイル」や北海道産の熟成昆布からとった「一番だし」のみを使ったかけつゆが人気の古参チェーン店だ。
熱心な地元ファンからは「福岡屈指の人気チェーンにぜひ東京の地を踏んでほしい」と東京進出を待ち望む声も聞こえるが、牧のうどんの畑中俊弘社長は「今のところその気はありません」と語る。
「現状で18店舗の経営で売り上げも客数も伸びています。人口が減っている地域でも結果が出ているので、この先も今のビジネスモデルでやっていけるのではないかと思っています」(畑中社長・以下同)
全国展開する「はなまるうどん」や「丸亀製麺」はカウンターに並んだトッピングを客が自らチョイスして運ぶセルフ形態が通常だが、畑中社長は「うちはセルフサービスはあまりやりたくないんですよ」とつぶやく。
「お客さんに商品を運んでもらうセルフサービスでは、どうしても接客がないに等しくなりますが、お年寄りのなかには『お冷を運ぶのもつらい』と言われる方がいます。九州の従業員なら『いらっしゃいませ!』とお客さんを迎えてお冷を出したりオーダーを取ったりしてバタバタと一生懸命に働いてくれますが、東京をはじめ関東や関西の従業員に同じようなメンタリティーがあるとは思えず、結果的にセルフサービスになってしまう。私はそこまでして都会にお店を出したいとは思いません。もっとも、私の後を継いだ者が『東京に行くぞ!』となるかもしれないけど、自分としては今のままでいいかな(笑)」
北九州発祥の資さんうどんは2024年に大手外食「すかいらーくホールティングス」の傘下になり、念願の東京進出と全国展開を果たした。飲食業界では他にも、ケンタッキー・フライドチキンを提供する日本KFCホールディングスが米投資ファンド・カーライルの子会社になり、ワタミが日本サブウェイを買収するなど業界再編が進む。