6月18日の最終期限を目前にトランプ大統領はどう判断を下すのか(CNP/時事通信フォト)
「日本も復活できるというシンボルになる」
「私が社長になった時(2019年)は日本製鉄の売り上げは4兆5000億円でした。その後、インドで製鉄所を買うなどして今は倍の9兆円ぐらい。USスチールと合併するとそれが約15兆円になる」(橋本氏)
さらに、完全子会社化の方針を堅持する日鉄に対し、立ちはだかってきた2人の大統領についても言及があった。
先に前大統領のバイデン氏について橋本氏は、「『安全保障上の問題がある』と言って、あるはずないのにでっち上げてダメだと言ってみたり」したと“分析”。トランプ氏については、「大きな投資はありがたいが、アメリカを支えてきた鉄鋼メーカーを外国の手に委ねるのは嫌だ、アメリカの手で復活させないとアメリカの恥である、自分がこれをやるという価値観、これは正しい」という認識を明らかにした。
その上で、「元々世界一だったUSスチールが、私どもが(米国に)行くことで初めていろんな問題を解決できる、ということを訴えて、トランプさんに、考え方を変えてもらおうということで(ここまで)来ている」と現状を説き、日鉄・USスチールの連合による“製造業の復権”という持論を改めて語った。
また、ピークアウトした企業が復活の末に世界ナンバーワンに返り咲いた前例がないことに言及した橋本氏は、「もう一回、日本製鉄が世界一の鉄鋼メーカーになれば、日本も復活できるというシンボルになる」と、日本再生への“野心”を口にした。買収をめぐる米政府との交渉は大詰めを迎えている。バイデン氏が発した買収破棄の期限まであと5日と迫り、買収不成立の可能性に言及するメディアもある。
橋本氏がホワイトハウスのトランプ氏と握手する日はくるのか。
■取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)
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「マネーポストWEB」掲載のシリーズ「日本製鉄のUSスチール買収問題」では、バイデン政権から買収中止命令が出る直前のタイミングでの「日本製鉄・橋本英二会長の独占インタビュー」や日鉄OBの証言、日米鉄鋼摩擦の交渉にあたった元経産官僚の最新現状分析などを掲載している。
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