重要なことは、増額請求を受けてもこうした手続きで決着するまでの間、賃借人は相当と思う家賃を支払っていればよく、家主の請求額を払わなくても違約にはならないということです。その代わり、裁判所が判決で決めた賃料額と支払額とに差があるときは、差額に年1割の利息をつけて清算する必要があります。
増額に理由がないと自信があれば従来どおりの金額を支払ってもいいですし、経済情勢等から多少の増額はやむなしと思い、年1割の利息負担になるのが心配なら、妥当と思う金額まで増額して払えば少しは安心ということになります。
ところがあなたの場合、家賃を受け取ってもらえません。お金を持って行ったのに受け取りを拒否されたのですから不払いの責任はありませんが、毎月、現金持参と受取拒否を繰り返すことも面倒ですし、不払いと言われて違約の責任を追及されたときに現金を持参したり受取拒否の事実を証明するのも面倒です。そこでおすすめするのが「家賃供託」です。家賃を供託所に預けることで支払ったことになります。手続きについては法務局に相談してください。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2025年7月3・10日号