急に言われても納得いかない…(イラスト/大野文彰)
とどまることを知らない物価高の影響で、都心部を中心に家賃が値上げされるケースも増えている。とはいえ、住んでいる賃貸物件で急に家賃の値上げが告知されても、すんなり受け入れられない人もいるだろう。もしも家賃の値上げに納得できない場合、拒否することはできるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
賃貸アパートに住んでいます。1か月ほど前に大家さんから「来月から家賃を値上げする」と連絡がありました。突然のことだったので納得がいかず、翌月の家賃はこれまでの金額しか払いにいきませんでした。ところが、値上げ額と違うとの理由で受け取ってもらえず、家賃を滞納している状態です。値上げを受け入れるしかないのでしょうか。(埼玉県・65才・アルバイト)
【回答】
納得できなければ、増額家賃を支払う必要はありません。借地借家法で「借賃増減請求権」が定められていて、一定の場合には家賃の変更を請求できることになっています。具体的には、土地や建物の税金、地価や建物価格の増減や経済情勢が変動したとき、周辺の同程度の建物の家賃に比べ家賃不相当なときなどです。
「借賃増減請求権」という文言に「増減」とあるように、大家が増額するだけでなく、賃借人も減額を請求できます。しかし、増減の請求をしても当事者間で話がつかなければ、まず簡易裁判所に宅地建物調停を申し立て、調停委員を交えて話し合うことなります。
それでも合意できないときは、文書で調停委員に決定を任せることも可能です。その場合、調停委員は適当な調停条項を決めることができ、家賃もこれで決定します。
これを断って調停を終了させ、裁判を提起することもできます。そして最終的には裁判所が正当とする増減額を判決で決定します。