5%には年間20兆円の財源が必要
一体、どのくらいの負担増になるのか。そもそも日本は防衛費増額をやったばかりである。岸田内閣の2022年、ロシアのウクライナ侵攻を受けてNATO諸国が防衛費のGDP比2%への引き上げを打ち出すと、当時の岸田首相は5年間で総額43兆円の防衛力整備計画を決定し、「2027年度にGDP比2%」を目標に掲げた。2025年度の防衛関連予算は9.9兆円(GDPの1.8%)だ。
日本のGDPは約609兆円(2024年)だから、防衛費5%なら約30兆円。差額の年間20兆円もの財源が必要になる計算だ。財政学者の藤岡明房・立正大学名誉教授が語る。
「年20兆円もの財源を賄うには、主要三税と呼ばれる消費税、所得税、法人税の増税が真っ先に浮かびますが、政府は消費税収をすべて社会保障財源にすると決めているため、防衛財源のための消費増税は筋が通らない」
所得税の2024年度の税収は約21兆円、法人税は約18兆円だ。20兆円の追加防衛財源を全額所得税で賄う場合は税率を2倍に上げる必要がある。年収500万円の人の税額(税率10%)は現在の約12.8万円から25.6万円になる。所得税と法人税で半分ずつ負担する場合でも、税額1.5倍の大増税だ。
「所得税と法人税は復興財源のために増税され、岸田内閣の防衛力増強でも引き上げる方針です。これ以上の増税はなかなか理解が得られないでしょう。その場合、主要三税以外の税目を増税して財源を捻出するのがこれまでの政府のやり方です」(藤岡氏)
ちなみに1990年に勃発した湾岸戦争の際には、日本は多国籍軍への90億ドル支援の財源のために石油税と法人税を臨時増税、東日本大震災では復興財源のために法人税・所得税を臨時増税、さらに岸田内閣の防衛費増額でもたばこ税と法人税増税(2026年4月実施)が予定されている。
では、主要三税以外で増税が予想されるものはなにか? 関連記事《【日本経済を襲う「トランプ防衛増税」シナリオ】防衛費GDP比5%に増額なら年間20兆円の財源必要 酒、たばこ、ガソリンへの増税にくわえ、物品税の復活や資産に課税する富裕税の導入も》では年間20兆円捻出のために酒、たばこ、ガソリンへの課税強化のほか、さまざまな増税メニューを詳報している。
※週刊ポスト2025年7月18・25日号