客の失礼な態度は従業員の行動にも大きく影響する(イメージ)
近年、「カスタマーハラスメント」が社会問題化しているが、飲食店などで店員に対して、横柄な態度を取ったり厳しい言葉を投げかけたりすることは、相手だけでなく自分にとってもマイナスとなり得る行為だと結論付けた研究がある。そうした行為が自分にとってどのような不利益につながるのか、イトモス研究所所長・小倉健一氏が解き明かす。
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飲食店で働くウェイターやウェイトレスに対し、横柄な態度を取ったり、客という立場を利用して厳しい言葉を投げつけたりする人々がいる。「君は研修中なの?」などと見下すような発言や、愛情のかけらもない、ただ相手を傷つけるためだけの言葉を浴びせる光景は珍しくない。私はこのような行為が、極めて危険な結果を招く可能性があると考えている。私自身、学生時代に飲食店で働いた経験がある。顧客からの理不尽な言葉や態度が、従業員の労働意欲を削ぎ、精神的な負担となることを身をもって知っている。
映画『ファイト・クラブ』では、ブラッド・ピット演じるキャラクターが、気に入らない客の食事に書くこともためらようなメチャクチャなことをするという衝撃的なシーンがある。このシーンは無論フィクションではあるが、顧客への報復行為が現実には起こりうるという、サービス業の裏側に潜む可能性を暗示している。飲食店で働くスタッフを怒らせる行為は、何一つ良い結果をもたらさない。それどころか、自身の食事に何らかの形で危害が加えられるリスクを高めるだけである。
キッチンという客の目に見えない場所で、一体何が行われるか想像もつかない。そのため、私は常に飲食店スタッフに対して、低姿勢で接することを心がけている。どんなにサービスの質が低く感じられたとしても、決して怒りの感情を表に出さない。たとえ料理の提供が遅れたり、注文を間違えられたりしても、笑顔で対応する。それは、私が寛容な人間だからではない。ただただ、彼らの報復が恐ろしいからである。
従業員に精神的な苦痛を与えることは、巡り巡って自分自身に返ってくる可能性があるという事実を、決して忘れてはならない。相手のミスを大声で指摘したり、嘲笑したりする行為は、一瞬の優越感と引き換えに、自分の食の安全を脅かすことになる。そのリスクを考えれば、どんな状況でも穏やかに接することが、結局は自分自身を守るための最も賢明な選択なのである。