松屋の「深夜限定社員募集」の取り組み(松屋フーズ中途採用サイトより)
依然として人手不足が続いている。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査2025年4月」によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は51.4%、非正社員では30.0%で、4月としては過去最高水準を記録したという。各企業が人材獲得に奔走するなか、大手牛丼チェーン店・松屋フーズの取り組みが注目を集めている。同社では柔軟な働き方をとして、深夜限定で働く「深夜限定社員」という就業形態を発案し募集継続中だ。
店舗に貼り出された求人情報を見た人たちからは、SNSで「松屋に深夜限定社員の募集が出てた」「店舗のトイレにあった」などと話題にあげられているところ。深夜限定社員の創設や募集の背景、さらには募集の“成果”について、松屋フーズに話を聞いた。
「年収375万円以上」「賞与2回」「奨学金返還支援」
東京・文京区にある松屋の店舗入り口に貼られていた求人情報には「深夜限定社員募集」とある。内容には「年収375万円以上」「賞与2回」「奨学金返還支援(代理返還)制度」といった文字が並ぶ。勤務時間は21時から9時までの間で1日実働8時間程度、休日は月に9~10回。勤務場所は自宅から通える近隣エリア店舗だ。
松屋の中途採用サイトによると、深夜限定社員の正式名称は「夜間限定店舗スタッフ」。「慣れれば日中に家族との時間や自分の時間を確保するなどリズムを保って活躍可能です♪ 転居を伴う転勤もありません!」と、職種の魅力や働きやすさがアピールされている。
松屋フーズ・松屋事業部事業推進部事業サポートGの担当者によれば、深夜限定社員の求人が始まったのは約2年前。その誕生経緯について担当者は、「深夜帯の人員確保の難しさと、その時間帯で安定的に勤務できる人材ニーズへの対応という2つの背景から生まれました」と話す。
「深夜時間帯は、アルバイト採用のハードルが高く、突発的な欠勤や短期離職が頻発していたことから、固定勤務できる専任社員を設けることで、現場の安定化を図ることが目的でした」(担当者、以下「」内同)
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査2025年4月」でも、非正社員では「飲食店」が65.3%となり、業種別で最も高い。担当者は、実際に同社でも「特定の時間帯や立地条件の厳しい店舗で、人手不足を感じる場面があります」と前置きしたうえで、特に「深夜帯(22時~翌5時)は学生アルバイトが避ける傾向が強く、欠員が埋まりにくい」とその実情を明かす。