中国株・平安健康医療科技の投資妙味はどこにあるのか(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。中国の医療分野でDeepSeekの活用が進むなか、田代氏が投資妙味ある個別株として注目しているのが、平安健康医療科技(平安好医生、香港・01833)だ。その中身を徹底解剖する。
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平安健康医療科技(平安好医生)の設立は2014年、香港市場への上場は2018年5月である。11年の歴史のある企業だが、一度大きな挫折があった。
創業者である王涛元CEOはマイクロソフト、アリババグループでソフトウエア開発の技術者として頭角を現し、キングソフト移籍後はCTO(最高技術責任者)として、オフィス用ソフトウエア(WPS)や、アンチウイルスソフト(金山殺毒)、オンラインゲーム(剣侠情縁)などの開発を主導した。中国平安保険グループには2013年、馬明哲CEO(創業者)に請われて入社、2014年には自身がCEOとなり社内ベンチャーとして平安好医生を設立した。
王涛氏は経歴から見てわかる通り、ソフトウエア、クラウドについて高い専門知識を持つ技術者だ。様々なビジネスがインターネット上に展開されているが、医療サービスのオンライン化は遅れている。自社で医師を雇い、効率性を高めるためにAIを医療補助として使う。患者はモバイルアプリを通じて獲得する。一つのモバイルインターネットプラットフォームで、医療情報相談(資料、音声、ビデオ、電話)、医療サービス(予約登録、成人病患者向けの健康管理、各種検査など)、医薬品、医療機器の販売、その他親会社に対するオンラインによる保険ビジネス支援などを行う。これが初期のビジネスモデルだ。
資本金は3億5000万元(70億円、1元=20円で計算)でスタートしたが、このモデルへの高い評価があり2016年4月にはシリーズAとして内外の機関投資家から5億米ドル(735億円、1ドル=147円で計算)の資金を調達、2017年12月にはプレIPOラウンドとしてソフトバンク・ビジョン・ファンドから4億米ドル(588億円)の資金を調達。2018年5月の上場時には87億7300万香港ドル(1641億円、1香港ドル=18.7円で計算)の資金を調達した。