毎年6月頃から無料の練習会に参加しているというオバ記者こと野原広子さん
60代になって“老後”にさしかかったとしても、それからの人生はまだまだ長い。そんな第二の人生を充実させるためには“生きがい”を見つけることが重要だ。子供の頃からの当たり前に、大人になってからハマることがある。ライターの野原広子さん(68才)にとって「盆踊り」がそれだという。
「盆踊り」での群舞が作る空気に魅了された
「2年前に93才で逝った母が大好きだったのが『盆踊り』。私が小学4年生の頃なんて、そろばん塾で学んでいるときに母がやってきて、『今日は盆踊りがあるんだから、早く帰ってきなさい』なんて連れ帰られたくらい(笑い)。盆踊りがある日は、15時くらいからお風呂に入って浴衣を着せてもらい、夕方から出かけたものでした」(野原さん・以下同)
子供の頃の盆踊りは毎年恒例の行事で、特別なものと思っていなかった。魅力に気づいたのは59才のとき。東京・日本橋浜町で開催された「大江戸まつり盆おどり大会」に参加してからだ。
「太鼓の音も踊りも、それまで私が見てきた盆踊りとは別格。浜町周辺は日本舞踊のお教室がたくさんあるので、その師匠や生徒さんが参加されるんでしょう。指先まで意識してたおやかに踊る人のなんと多いことか。そして何より“群舞(ぐんぶ)”に打たれました。それまでの私は、仕事でもプライベートでも、集団に属したことがなかった。盆踊りでは、大勢の人が同じ踊りを楽しんで独特の空気を作る。一瞬の夏を皆で味わう一体感から、『あぁ、生きているな』と感じられて涙があふれました」
現在は『東京音頭』『銀座カンカン娘』『ダンシング・ヒーロー』などが十八番に
翌年からは区などで開催される盆踊りの練習会に参加して踊りを覚え、渋谷や日比谷、築地など、さまざまな盆踊り会場を巡った。
「誰がどこに参加してもいいし、浴衣を着る必要もない。決まりや縛りがなく、ただそこに集まって、同じ踊りを踊る。たとえ踊れなくても注意されることはないし、周りを観察していれば何となく踊れるようになる。脳トレになるし、仲間もできる。自由で解放感があって……今後もライフスタイルから切り離すことはないでしょうね」