最高気温41℃を記録した四万十市では「かき氷41円」企画も(2013年。時事通信フォト)
「なんでこの街は暑いのをPRしているんだ?」
2008年に熊谷市は「あっぱれ・アピール・あつべえうちわ事業」を行いました。この事業の説明にはこうありました。
〈昨年は暑さ日本一となり、熊谷の暑さの取材にキャラクターグッズとして話題性の高かった「あつべえうちわ」を、今年は40.9度の記念版としてデザインをリニューアルしました。また今年、北海道洞爺湖サミットが開催されるにあたり先進国8ヶ国語で記された記念バージョン版を各国に謹呈して熊谷市の温暖化防止の取り組みを世界に紹介しました。〉
熊谷市としては「あつべえ」関連の取り組みは、暑さ対策と地球温暖化対策の名目があったのでしょう。しかし、今年の猛暑を体感してしまうと、「なんでこの街は役所も商店も市民もこんなに暑いのをPRしているんだ?」と思うようになる。そもそもかつて熊谷・多治見・館林が市を挙げて“暑さ日本一”を争っていたこと自体、理解できなくなるのでは。
今夏は40℃超えが珍しくもないため、もはや「暑さ勝負」は成立しにくくなっていると思います。そうした中で、どこかの自治体で「我が街が日本で初めに42℃を記録するのだ! いや、42.195℃を記録し、『暑さ記念マラソン』をやると話題になるかもしれないゾ!」なんて、自称アイディアマンの課長補佐が言い出したりしないか心配しています。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。