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大竹聡の「昼酒御免!」

【大竹聡の昼酒御免!】あの頃はみんな若かった 銀座のビルの7階で「ハイボールと缶詰と雑誌」が誘う青春と郷愁のハーモニー

ハイボールブームの7年も前のこと

もちろん『酒とつまみ』も揃っている

もちろん『酒とつまみ』も揃っている

 なんと、なんと。2002年といえば、その年の10月に、私はフリーランスの仲間内で『酒とつまみ』というミニコミ誌を創刊した年だ。創刊号から4号まで、「中央線で行く東京横断ホッピーマラソン」という酔狂連載を私が担当したのだが、あの頃、大学を卒業したとは驚いた。

「今の妻と付き合っていた頃です。僕はこの店で、銀座で働いていた彼女とよく待ち合わせをしていたんですね。そのとき、カウンターに置いてある『酒とつまみ』を読んで、ああ、頭のおかしい人がいるなって思いました」

 失敬な。頭がおかしいのは認めるが、面と向かって言われると腹が立つ。まあ、たしかに、どうかしていた時期ではある。

 ホッピーの飲める店を訪ね歩く日々。店行脚を終えると吉祥寺のバーへ最後に寄り、70mlくらいはいるショットグラスに3杯のラフロイグをストレートで飲み干して帰宅していた。酔った挙句の真夜中に牛乳瓶1本以上のアイラモルトは、毎晩、ドスンと効いたものだった。駅まで自転車を使っていたときは、井の頭恩賜の森の中の同じ切り株に2度突っ込んで、派手に転倒したものだった。

 受け身も取れたんだよなあ、あの頃は。私ははるかなる感慨を覚えるのである。

「ハイボール、おかわり」

 2002年は、『酒とつまみ』の頃であり、『ウイスキーヴォイス』の頃であり、ケンちゃんは青春の真っただ中にあり、そしてロックフィッシュが船出した年。空前の角瓶のハイボールブームの、7年も前のことである。

 ケンちゃんによれば、奥方はかつて間口さんが試作品としてつくってくれたガトーショコラのおいしさが忘れられないという。一方のケンちゃんは、ロックフィッシュに来たらスコッチエッグを食べずに帰ることはできないと力説。ステーキ、ピザと、先の店でも、それぞれ私の倍くらいの分量を食べているのだが、まだ足りないらしい。

 ゆで卵を味付けしたコンビーフで巻いてゴマをまぶすという、本場のスコッチエッグとは別物の、ロックフィッシュオリジナルスコッチエッグを、彼は実にうまそうに食べる。それもそのはず、彼は若いのだ。私が連夜、ラフロイグの霧の中にさまよっていた頃、彼は夢に胸を膨らませる新入社員であった。

缶詰を使った店主オリジナルつまみの定番がこれ

缶詰を使った店主オリジナルつまみの定番がこれ

 思えば遠くへ来たもんだねえ。お前は何をしでかしたのかと、3杯目のハイボールが、私に訊く。

昼から軽く1杯という時に最適(「ロックフィッシュ」東京都中央区銀座7-3-13 ニューギンザビル1号館7F)

昼から軽く1杯という時に最適(「ロックフィッシュ」東京都中央区銀座7-3-13 ニューギンザビル1号館7F)

シリーズつづく第1回から読む

【プロフィール】
大竹聡(おおたけ・さとし)/1963年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。出版社、広告会社、編集プロダクション勤務などを経てフリーライターに。酒好きに絶大な人気を誇った伝説のミニコミ誌「酒とつまみ」創刊編集長。『中央線で行く 東京横断ホッピーマラソン』『下町酒場ぶらりぶらり』『愛と追憶のレモンサワー』『五〇年酒場へ行こう』など著書多数。「週刊ポスト」の人気連載「酒でも呑むか」をまとめた『ずぶ六の四季』や、最新刊『酒場とコロナ』が好評発売中。

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