厳しい就職難が常態化と学歴至上主義が影響
日本の大学院への留学を志望する中国人が増加しているのはなぜなのか。都内の私立大学に勤務する教員・Bさん(40代男性)によれば、その要因の一つに中国社会の構造変化があるのではないか、と指摘する。
「中国では新卒者数が増加し続け、かなり厳しい就職難が常態化しています。また日本以上に学歴至上主義やエリート主義の意識が色濃く、とくに博士号、修士号取得者に対する社会的評価が日本よりも高い。そこで、『修士号が取りやすい』という理由で日本に留学し、修士号取得者として帰国して厳しい就職活動を有利に進めようとするモチベーションが働きます。
経済的に豊かで英語が堪能な層は欧米の大学院に留学しますが、英語が苦手、経済的なコストを下げたいという家庭では、よりコスパよく、安価に留学できる日本の大学院が魅力的なのでしょう。とくに中国の若者の一部には、日本のアニメやアイドルなどのポップカルチャーが浸透していることも大きい。早くから日本語や文化に慣れ親しんでいる人もいて、学部から日本の大学を志望する受験生も増えています」(同前)
激しい学歴社会や就職難により、修士号・博士号取得を希望する中国人が増えるなか、日本は魅力的な留学先の一つとして受け止められている。続く記事では、教員の指導負担が高まるにもかかわらず、多くの中国人留学生を受け入れざるを得ない、日本の大学事情についてレポートする。
(第2回に続く)