想定外の遠距離通勤をする羽目に…
会社員にとって大きなイベントのひとつが“転勤”だ。全国、さらには海外にも拠点をもつ企業も珍しくないが、見知らぬ土地で生活の基盤を新たに築くのは難しいという現実もあり、昨今は転勤を嫌がる人も多い。「転勤がない」ということを会社選びの条件に入れる人もいるだろう。ただ、本社が移転したり、部門の統廃合、はたまた、他社に買収されたりなどの事情で、突如、勤務地が変わってしまうというケースもある。想定外の勤務地変更で通勤時間が激増した人たちの嘆き節を集めた。【前後編の前編】
企業譲渡で本部が下町から世田谷区に移転
東京都足立区在住のHさん(30代/男性)は、“口約束”に騙された。
「私は東京の東部を中心に展開している学習塾グループで働いています。社長は地元の人で、“下町から絶対出ない”と話していたので、私は足立区にマイホームを買いました。会社は順調に成長を続け、私は23区東部ブロックを統括する立場でした。
しかしコロナ禍で経営が傾くと、社長はあっさり会社を譲渡。新オーナーは富裕層が多い城南地区でビジネスを展開したいようで、私は責任者に指名され、否応なくそちらに勤務することになりました。本部も世田谷区に移動し、私は現在、東京23区の東の端から西の端まで1時間半かけて通っています。
もちろんそれが嫌なら職場の近くに引っ越すとか、辞めて転職するか、といった選択肢がありますが、今さら転職するのも面倒だし、かといってローンはたっぷり残っています。そもそもここ数年で不動産価格は猛烈に上昇して、世田谷区なんてとても手が出ません」