自社イベントでプレゼンテーションを行った、ソフトバンクグループ代表取締役会長の孫正義氏(写真:EPA=時事)
日経平均株価が最高値を更新するなか、大きな上昇が目立つ銘柄がある。その一つがソフトバンクグループだ。この2ヶ月ほどで2倍以上になる急伸となっている。今回は個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏がソフトバンクグループの最新の決算を振り返りながら、同社の将来を担う可能性を秘めた投資先企業を紹介し、解説する。【前後編の前編】
* * *
日経平均株価、TOPIXともに過去最高値を更新し、市場に活気を感じる。アメリカの利下げ期待に加え、決算発表が一巡し、企業業績に対する警戒感が後退したことも上昇を後押ししているが、その牽引は、日経平均株価の構成銘柄としても寄与度の高いソフトバンクグループ(9984)の躍進と言えるだろう。
6月には7000円台だった株価は8月18日の終値で1万6705円をつけるなど、短期間で倍以上になる株価上昇を見せている。
今回は、同社の8月7日に発表された直近の決算を振り返る。また、今後の可能性を探る意味でも、改めて、代表である孫正義氏のコメント、同社が運営しているビジョンファンドが投資している未上場の企業などをチェックし、同社の今後のポテンシャルについて確認していきたい。
孫正義氏が掲げる「ASI」のビジョン
8月7日に発表された2026年3月期第3四半期決算は前年比で大幅な成長を見せた。経常利益は前年比3.1倍、純利益は黒字転換となり、経常利益、純利益については事前に出されていたアナリスト予想を大幅に上回る結果となった。業績成長のポイントはビジョンファンドによる投資利益、また、NVIDIA株の利益や韓国の電子商取引大手Coupang、倉庫自動化の米Symboticなどへの投資による収益確保が業績に貢献した。そして、今後も、OpenAIへの追加投資を含め、AI分野への積極投資姿勢を表明したことで株価は決算発表後も大きく上昇している。
同社の戦略の中核にあるのが、孫正義氏が掲げる「ASI(汎用人工超知能)」のビジョンだ。孫氏は、「私は、すべてを賭けるつもりで、このASIの世界に挑んでいます。当社グループは群戦略の下、多種多様な企業で構成されていますが、その中でアーム(半導体設計会社とOpenAIの2社こそがASI時代のNo.1プラットフォーマーを目指す上で欠かすことのできない両輪になると考えています」
そして、孫氏は単なる「知能の向上」だけでは不十分だと語る。
「超知能だけでは十分ではありません。本当に目指すべきは超知性です。能力があるだけでは尊敬に値しません。そこに思いやりや愛情がなければ、真に信頼される存在にはなれません」
この考え方は、ソフトバンクグループの投資判断にも影響しており、単なるテクノロジー企業ではなく、人類の幸福や社会の進化に貢献する企業かどうかが、投資根拠となっているだろう。
ソフトバンクグループの投資先には、AIや自動運転のような先端領域だけでなく、農業・小売・創薬といったリアル産業の革新を担うスタートアップも含まれている。
今回は思わず驚くような、同社の投資先である未上場の注目スタートアップ企業を紹介する。