毒蝮三太夫(左)と大木凡人が考える“老い支度”とは
終活の重要性が説かれて久しいが、慌てて取り組むと失敗しかねない。ひと口に終活といっても、「年代」によってやるべきこと、やってはいけないことがあるからだ。
“終活”ではなく“愁活”と呼ぶ
内閣府「令和6年度高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」によると、60歳以上の56.2%の人が財産の整理や身の回りの片付け、墓の準備など何かしらの「終活」をしているとの結果になった。この現状に疑問を呈すのは俳優の毒蝮三太夫(89)だ。
「俺、“終活”って言葉が嫌いなんだ。だから“愁活”って言ってるの。そうすれば色気があるだろ? 色気って言ってもギラギラしたものじゃなくて、キラキラした色気。例えばカミさんがいなくなったらカミさんに代わる話し相手を作るとかね。そのためには“人に嫌われないジジイ”になることだよ。それが俺の愁活だね」
死に向かって人生を仕舞う寂しいものではなく、最終的に頼れる人を作る、最後まで自分らしく生きるための準備を“愁活”と呼んでいるのだという。
「愁活の肝は清潔感。別に着る物に金をかけろってわけじゃなく、ちゃんと風呂に入ってだらしない服を着ないこと。あとは若者に“あれやってくれ、これやってくれ”と無理強いしない。これね、“年寄りを売り物”にして甘えることなんだよ。そんなのは嫌われる」
自分のことは自分でできる、そのための整理が重要なのだ。ただし、「時期が重要」だとも毒蝮は言う。
「家財整理は70歳くらいから始めたよ。物を片付けることは清潔感につながるからね。でも早すぎる片付けは良くない。思い切って捨てて、必要な物まで捨てちゃってさ、“あれはどこ行ったっけ?”ってまた買う羽目になることはよくある。歳取ってから必要になる物だってあるし、物の整理なんて70過ぎてから少しずつやればいい」
自動車免許の返納についても持論があるという。
「車がないと生きていけない地域だってあるんだし、早まって車を手放してボケちゃって後悔ってことはあるだろうね。だいたい、年寄りにだけ免許返納を迫るってのは暴論だね。20代、30代でも運転がダメなヤツはいる。
そういうヤツらからは取り上げないとダメだけど、ずっと無事故できた年寄りから免許を取り上げるのなんて冗談だと思っているよ。俺は来年90歳で免許の更新を目指しているよ。ただ、歳を取ったら目の検査や認知症の検査を受けること。検査をパスして慎重に運転できるうちは返納しなくていいと思うよ」