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血圧の基準値を設定する「日本高血圧学会」役員に巨額製薬マネー 製薬会社との関係めぐり理事長が回答「利益相反は適切に管理されている」

製薬企業との間には高い透明性が求められる(写真:イメージマート)

製薬企業との間には高い透明性が求められる(写真:イメージマート)

 日本の血圧基準値は厳格化の一途を辿っており、今回新たに75歳以上の降圧目標値が引き下げられた。このガイドラインを定めた日本高血圧学会と、降圧剤をつくる製薬会社との関係はどのようなものか。学会役員に渡った製薬会社からの「謝礼」を調査すると、医師平均をはるかに超える巨額の製薬マネーが動いていることが明らかになった。

1位の学会理事は1億円超、5000万円超も3人

 学会が高血圧の診断基準や降圧目標値を引き下げれば、それだけ患者が増えることになる。全国70万人の健診結果を解析し男女別・年齢別に血圧の「基準範囲」を示した東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一氏が言う。

「私の試算では、今回の改訂による降圧治療の対象者は約4635万人。これまでより600万人以上増加し、目標値に達するために処方される薬の量や種類が増えることになります」

 降圧剤をめぐっては、2013年に大手製薬会社と国内医学部が関与した研究不正「ディオバン事件」【※注】が発覚し、「製薬マネー」問題として厳しい目が向けられてきた。

【※注/大手製薬会社の降圧剤「ディオバン」を用いた複数の医師主導臨床研究を巡り、データの捏造・改ざんが発覚。研究に関与した国内5大学の関連論文すべてが撤回に追い込まれる事態に発展した】

「だからこそ高血圧学会と製薬会社の間には高い透明性が求められる」と話すのは、医療ガバナンス研究所・利益相反透明化プロジェクトリーダーの尾崎章彦医師だ。

「医師は講演会や原稿執筆料、新薬開発のコンサル料など複数の名目で製薬会社から謝礼を貰うことが珍しくない。なかでも高血圧治療の分野は患者が多く、製薬企業にとって大きな市場です。降圧剤のように効果に大差がない薬ではマーケティング効果が出やすいため、製薬企業は臨床現場で自社の薬を処方してもらうよう営業活動に力を入れます。製薬企業と医師の関係が薬の処方を歪めることがないよう、第三者の監視が必要です」

 医師への謝礼は各製薬会社が決算で公開している。これを全調査、無料公開しているのが医療ガバナンス研究所と特定非営利活動法人・Tansaが共同で作成した「製薬マネーデータベース」だ。

 本誌・週刊ポストは日本高血圧学会役員及びガイドライン作成統括委員の計29人について、「製薬マネーデータベース」をもとに、製薬企業からの受取額(2018~2022年の5年分)を調査。すると、医師全体の平均(5年で計155万円)を大幅に超えるケースが多数あることがわかった。

 同期間に計1000万円超の謝礼を受け取っていたのは16人。1位の同学会理事・野出孝一氏は1億円を超え、2位の西山成氏(副理事長)、3位の大石充氏(理事)、4位の柴田洋孝氏(理事)は5000万円を超えていた。

 一方で医師平均より低い謝礼金額だった役員はわずか5人だった。尾崎医師が言う。

「率直に言って金額が大きすぎます。5000万円超となると医師のなかでも上位1%未満。上澄みのなかの上澄みです。多額のお金を受け取ると、その企業に不利なことを言いづらくなる問題もある。目標値の改訂の背景になんらかの利権を疑われないよう、学会の役員は製薬企業と節度を持って接するべきです」

次のページ:学会役員からの回答は
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