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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「えっ、あのウニ1万円もしたの!?」“時価メニュー”を注文して会計時に仰天 仕入れ値が変動する食材を出す飲食店側の苦労と「刺身三種盛り」が定番化する事情

筆者が実際に唐津の鮮魚店で買った板ウニ。安いときは1400円だった

筆者が実際に唐津の鮮魚店で買った板ウニ。安いときは1400円だった

「刺身三種盛り」「五種盛り」メニューが定番化する理由

 もちろん、海外でも海産物はメニューに「Market price(=時価)」と書いてあることは多いです。特にカニとロブスターですね。だから時価自体は世界中の商習慣として珍しいものではない。時価のメニューを提供する側の見解を、なじみの居酒屋店員・Aさんに聞いてみました。

「時価にするのは、高級かつ仕入れ値がその日にならないと読めないものですね。たとえば鶏の唐揚げであれば、冷凍の鶏肉があるわけで、安定した価格で出せますが、刺身は本当はキツイ。チェーン店でイカやマグロの刺身を決まった価格で出せていますが、あれは大量に冷凍で仕入れているからでしょう。

 ウチみたいな個人店ではその日の朝に市場に行くから、個別の刺身の決まった価格は本来書けないんですよ。そこで逃げを打って『刺身三種盛り』『刺身五種盛り』のような形にして、定価を1280円と1780円とする。その三種・五種が何になるかは、私たちもその日までわかりません」(Aさん)

 こうした事情に加えて、時価は“調整の役割”もあるといいます。というのも、前出のようにキャベツが通常の3~5倍の価格になってしまった時はメンチカツの付け合わせのキャベツすら高くなります。とはいえ、さすがに「メンチカツ(時価)」とするわけにはいかない。やはり「メンチカツ780円」みたいに、決まった価格で売らないと客も納得しないでしょう。そうなると利益が圧迫されるので、別のメニューで時価の高級品を用意しておき、価格の弾力性を少し持たせるようにしているそうです。ただし、「客が仰天するような金額にはしません」とAさんは言います。

 そのうえでAさんは、「『今日の時価はいくらですか?』という質問は、躊躇しないで聞いてほしい」と言います。ただ、聞くのはなんか恥ずかしいし、聞いたらそれを注文しなくてはいけなくなるんじゃないかと思ってしまうんだよなァ……。飲食店側の苦労や努力はわかるけど、やっぱり「板ウニ(時価)→本日は1万円」と書いてほしかった!

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。

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