日枝久氏の責任問題はどう決着するか(時事通信フォト)
フジテレビでは元タレントの中居正広氏による同局アナウンサー(当時)への“性暴力”問題が昨年末に発覚後、経営陣や幹部社員の不手際が露呈。3月末に出された一連の問題に対する第三者委員会調査報告書では、同局のコンプライアンス(法令遵守)・ガバナンス(企業統治)の欠如が白日の下に晒された。
同社は港浩一・前社長と大多亮・元専務に対し、50億円の損害賠償を求めて提訴したと発表したが、40年以上取締役を務め退任した日枝久・取締役相談役の責任問題は宙に浮いている。背景に何があるのか。【前後編の後編】
アクティビストは今回の経営判断をどう見るのか
今回の提訴を受けてなお、フジの対応が十分かは疑問が残る。
まず、トラブルの当事者である中居氏が訴えられていない。テレビ朝日元法務部長の西脇亨輔・弁護士は「フジの役員でも社員でもない外部のタレントで、旧経営陣のような法的義務は会社に負っていない。またフジの損害のどの範囲が直接、中居氏の行為によるものと言えるか、法律上の認定は難しいためだみられている」と解説する。
さらに疑問なのは日枝氏が訴訟の対象になっていないことだ。
第三者委の報告でもその存在は、「経営に強い影響力を及ぼしている」と強調され、日枝氏による社長・会長人事の独断などでガバナンスが機能しなかったと指摘される。
「日枝氏は旧経営陣の中心人物として訴訟対象になり得たはず。最終的に裁判所が責任を認定するかどうかは別として、日枝氏の責任を追及する意思が会社にあることを内外に示す意味では、訴える選択肢はあったと思います」(西脇氏)