冷奴は夏の昼ビールの最高の相棒だ
お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。連載第16回は、多摩川近くの大衆食堂でランチ客や地元の常連に紛れて、家庭的な雰囲気を楽しむ。【連載第16回】
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昼から飲みたい欲求をいっさい抑制することなく酒を飲む。不届き千万な行為かもしれないが、ときと場所を選べば、これも極上のひとときに化ける。
今年の夏の暑さハンパなものではなかった。こう暑くてはどうにもならん! と呟きながら、昼メシはどうすると思いめぐらすとき、まっさきに思いつくのが昼ビールだ。茹だるような暑さの中から冷房のきいた店内へ逃げ込み、握ったビール瓶の冷たさに感動しながらコップに注ぎ、泡が引くのももどかしいとばかりにぐいっとやるひととき――。あの快感が頭をよぎったら最後、昼酒を我慢することなどできやしない。
去る8月26日。連日の35℃超えにアゴも出る酷暑の正午だった。
私は、飲み友ケンちゃんとの約束に遅れた。約束は、12時少し前に東急東横線新丸子駅近くの「三ちゃん食堂」の前で、というものだったが、東京の多摩南西部から南武線に乗って武蔵小杉から歩いた私は、酷暑の中、朦朧としていたのか、間違えようもない道を間違えて、さて、どこにいるのだったっけと改めてスマホで確認すると、1本横の道を通って目的地の先まで歩いていたのだった。
10分ほど遅れて店内へ入ると、ケンちゃんは店の一番奥、ホール担当のお姐さんたちが厨房から料理を受けだす窓口の目の前にいた。そう、彼は開店30分も前に到着し、列をなすお客さんたちの先頭で開店を待ち、最初の客となって入店したのだった。
やる気満々、いや、飲む気満々なのである。けっこう、けっこう。