老人ホームから退居せざるを得なくなるケースとは(イメージ)
老人ホームに入居すれば、終の棲家は一安心……と安堵していたにも関わらず、ホームから突然「出て行ってください」と退去通告を言い渡される事例が頻発している。老人ホームアドバイザーの伊藤直剛氏(N-TAKE代表取締役社長)が言う。
「近年、施設側からの『退居通告』をめぐるトラブルは増加の一途を辿っています。主な原因は代金の未払いや滞納、他の入居者や職員とのトラブル、病気の悪化など。近年は『入居一時金』が不要の施設が増え、入居者の間口が広がったことも、トラブル増加の背景にあると考えられます」
暴力行為は一発退場
老人ホームから退居を求められるケースで少なくないのが、職員や他の入居者への「暴言」「暴行」「ハラスメント」だ。
「入居者同士の些細ないざこざで終わらず、暴力行為に及んだ場合は“一発退場”になる可能性があります」(前出・伊藤氏)
実際にこんなケースがあったという。
「70代で有料老人ホームに入居した元会社員の男性は、施設に馴染めず周囲に高圧的な言動を繰り返していました。その態度を諌めた別の入居者に男性が腹を立て、突き飛ばしたところ相手が転倒し負傷。施設からは即、退居通告が出されました」(同前)
認知症が進行した結果、職員や他の入居者に暴言を浴びせたり、手を出してしまうなどの問題行動が頻発して退居を余儀なくされる事例もある。
「暴力や暴言の加害者側に重度の認知症が見られる場合、トラブル再発を防ぐためにも、最終的には受け入れ体制のある精神科や認知症対応病棟への入院となるケースが一般的です。症状が改善するのは稀なため、入院先の病院で余生を過ごすことになります」(同前)
認知症の症状がなくても、暴力行為が原因で施設に退居を通告されると、その後に困難があると伊藤氏は言う。
「入居者側や施設側から相談を受けてきた経験上、暴力行為が原因で退居を求められた人は、特に近隣エリアで受け入れ先を見つけるのが格段に難しくなります。都道府県をまたぐなど、エリアを広げて転居先の施設を探さざるを得ない場合がありました」