干ばつの影響を受けるカリフォルニア米
こうした流れの中で、田牧さんは20ヘクタール以上を経営する農家ならば、60キログラム(1俵)当たりの生産コストを現状の1万円強から6000円程度に削減することができ、輸出の道が今以上に開けると考えています。
その実、一部の国産米はすでに価格面でカリフォルニア米と競争できるレベルになっています。田牧さんは2016年から、茨城県産米をサンフランシスコに輸出するのを手伝ってきました。
スーパーの店頭価格は、高くて15ポンド(6.8キログラム)当たり39ドル99セント。店によっては、マージン分の上乗せを削って20ドル台で販売する場合もあります。対して、カリフォルニア産コシヒカリの店頭価格は30~35ドル。輸出するコメは雑種第1代目で多収の「ハイブリッド米」ながら、カリフォルニア産コシヒカリに比べて食味がよいため、特に30ドル以下の値を付けるとかなり売れるそうです。
この輸出で農家に支払われる額は60キログラム当たり約7000円ほどです。今なら、輸出米生産に支払われる新市場開拓に対する補助金が上乗せされ、1万円を超えます。ただ、新市場開拓に対する補助金が出るようになったのは2018年からのことで、それまでは補助金はなく、農家は手取り7000円ほどで輸出をしていました。
なお、カリフォルニア米の減産には近年拍車がかかっています。深刻な干ばつが原因で、価格の高騰が一層進みそうです。
史上最悪とされる干ばつのため、州内の農家は作付け面積を減らしたり、灌水の少なくて済む作物に転換したりしています。こうした環境の変化からしても、国産米が日本食ブームに乗って世界を席巻する可能性は十分にあるのです。
ただ、それは「令和の米騒動」以来の米価高騰が落ち着いてからの話になるのですが。
※山口亮子著『農業ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋して再構成。
(第2回に続く)
【プロフィール】
山口亮子(やまぐち・りょうこ)/ジャーナリスト。愛媛県出身。京都大学文学部卒、中国・北京大学修士課程(歴史学)修了。時事通信社を経てフリーに。雑誌や広告などの企画編集やコンサルティングを手掛ける株式会社ウロ代表取締役。著書に『ウンコノミクス』(インターナショナル新書)、『日本一の農業県はどこか 農業の通信簿』(新潮新書)、共著に『人口減少時代の農業と食』(ちくま新書)、『誰が農業を殺すのか』(新潮新書)などがある。日本の食と農に潜む課題をえぐり出したとして、食生活ジャーナリスト大賞ジャーナリズム部門(2023年度)受賞。