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ビジネス
日本の農業「知られざる勝機」

“令和の米騒動”の一方で日本産米が海外で躍進 “ライバル”カリフォルニア米は干ばつによる水不足で減産に拍車、日本の稲作の生産コスト削減で「世界を席巻する可能性」

日本産米は世界の市場で戦えるのか(イメージ)

日本産米は世界の市場で戦えるのか(イメージ)

 昨年来、“令和の米騒動”とも騒がれる価格高騰で、大きな注目を集めているお米。国内のコメ農家の減退を報じるニュースもあるが、国外に目を向けると、日本産米が“ライバル”カリフォルニア米に価格で挑み、輸出で躍進しているという一面もある。日本産米が日本食ブームに乗って世界を席巻する可能性とは──。

 ジャーナリスト・山口亮子氏による、日本の農業を取り巻く現代的な課題と可能性を多角的に捉えた『農業ビジネス』より一部を抜粋して再構成して、解説する。【全3回の第1回】

なぜ日本米がカリフォルニア米に挑めるようになったのか

 世界的な和食ブームで、海外には日本食レストランが2023年時点で18万7000店あり、2006年(2万4000店)の8倍近くに増えています(農水省の調査による)。

 しかし、こうした店での国産米の使用は多くありません。ネックになっているのが価格で、価格競争力のあるカリフォルニア米が世界に販路を広げてきたのとは対照的です。これに国産米が取って代わることも夢ではないと、米国やウルグアイでコメビジネスを展開する田牧一郎(たまきいちろう)さんは断言します。

「カリフォルニア米の生産量は70万~80万トン(白米ベース)。これをそっくり日本のコメに置き換えようと思えば、できる」

 田牧さんのこの言葉は、にわかには信じがたいものでした。カリフォルニア米といえば、播種(はしゅ)から刈り取りに至るまで、機械化一貫体系が確立されています。大規模で、かつ生産費が安く、価格競争力で日本は遠く及ばないイメージがあります。

 田牧さんは、カリフォルニアの大規模経営を熟知している人物です。1989年にカリフォルニアに移住し、90年代にカリフォルニア産コシヒカリのブランド「田牧米」を作り、高い評価を得て一大ブランドに育て上げました。現在は、ロサンゼルスの輸入販売会社Tamaki Farms Inc.の代表を務めています。

 カリフォルニア米に国産米が価格で挑むということは、少し前なら考えにくかったのですが、そうではなくなりつつあるというのです。これは、現地の干ばつによる水不足で、農家が大量の水を使うコシヒカリのようなコメを避けるようになり、値上がりしたことも一因です。

 しかし、主な理由は日本の稲作の構造変化にあります。高齢農家の離農が進み、大規模化が全国的に加速しています。規模を拡大するには、作業の効率化が不可避です。労働時間の4分の1を占める育苗と田植えをやめ、直播(ちょくは)と呼ばれる種を田んぼに直接まく方法に切り替えたり、肥料と農薬をまく回数を減らしたり、そもそも手間のかからない品種に切り替えたりといった、手間が省け生産費の低減に直結する試みが広がっています。

次のページ:干ばつの影響を受けるカリフォルニア米
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