銀行口座の凍結リスクをどう避けるか(写真:イメージマート)
親の認知症で家族が苦労するのは、医療や介護の側面だけではない。本人の意思確認ができないことで、行政や金融などあらゆる面で「手続き」ができなくなるのだ。いざという時では手遅れになる、事前に済ませておくべき手続きについて解説する。
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親が認知症になった時、「お金の管理をどうするか」は切実な問題だ──。都内在住の会社員A氏(50代)は、80代の父が総合病院で「軽度から中等度の認知症に移行しつつある」と診断されたことを受け、実家を処分し、父を介護付き老人ホームへの入居させることになった。A氏がまず困ったのは、施設入居前に父が銀行印を紛失し、キャッシュカードの暗証番号もわからなくなっていたこと。
「ホームの月額利用料などは父の口座からの引き落としを考えていましたが、銀行印が見つからず手続きができなかった。仕方なく私の口座からの引き落としにしたのですが、毎月20万円以上の支払いを続けるには、父の口座から預金を移すしかない状況でした」
そう話すA氏は「銀行に本人の認知症を伝えれば、口座が凍結されてしまうのではないか」と不安を感じていたという。東京国際司法書士事務所の代表司法書士、鈴木敏弘氏が言う。
「短期の間に幾度も多額の引き落としがあるなど、銀行側が不正取引や違法行為のリスクを察知した場合は、口座が凍結されることがあります。また、本人の意思確認ができない状態での預金引き出しは親族間の相続トラブルに発展する可能性もある。本人の口座から出費が必要な場合、金融機関には『本人の介護費用のため』と正直に事情を説明するのが得策です」