チームの結束が個人の限界を超える力になり得る
今回の動画騒動をきっかけに、営業主体の会社におけるチームビルディングの重要性を考えてみたい。営業の仕事は、数字を追う厳しい現場だ。例えて言うなら、マラソンを走るようなもので、一人で走り続けるのは疲れるが、仲間と一緒に走れば励まし合いながらゴールを目指せる。ゾス飲みダンスのようなイベントは、社員の結束を高め、モチベーションを保つ役割を果たす。
実際、海外の研究でも、この点が裏付けられている。論文「組織におけるチームビルディングとパフォーマンス:問題の探求」(アダ・マック・オジグボ、イデグベソル・マリヤム、チグボ・ドナトゥス・ンギゲ、2020年)では、チームビルディングの効果について次のように述べられている。
「チームビルディングは、組織がチームベースの構造を活用して生産性、収益性、サービス品質を向上させるための重要なトピックである。この時代に増大する競争の中で、管理者はチームワークの重要性をこれまで以上に認識している。チームは個人の出力を協力によって拡大する。チームで働く従業員は、組織の基準となる。チームベースの改善努力は、企業の成果を向上させる。研究によると、チームで働く従業員は個人より多くの出力を作れる。
チームビルディングは、組織に多くの利益をもたらす。例えば、相互依存、仕事満足度の向上、関係改善、対立解決、効果的なコミュニケーション。低コスト、高生産性、品質改善、速さ、イノベーション。決定プロセスの改善、生産性向上、従業員満足度の増加、チーム機能の改善、人間関係の強化、組織的コミットメントの向上。
しかし、チームビルディングの効果は混合的で、時には非有意である。チームビルディングは、1980年代から広がり、柔軟性、決定の加速、タスク配分、目標集中、モチベーションとシナジーの増加をもたらす」
この引用からわかるように、チームビルディングは組織のパフォーマンスを高めるものの、課題も伴う。営業部門では、特に感情の共有が重要だ。チームビルディングの利点として、生産性向上や満足度の増加が挙げられるが、批判的な研究では効果が曖昧な場合もある。しかし、全体として、チームの結束が個人の限界を超える力になり得る。
普遍的に見て、ゾス飲みダンスのような社内文化は、現代の働き方を問い直す。多くの会社で、社員は孤立しがちだ。例えて言うなら、森の中の木々がバラバラに立っているようなものだが、根でつながれば森全体が強くなる。
私はこんな踊りはできない。たぶん、グローバルパートナーズの社内文化を知っていたら求人に応募することもないだろう。しかし、営業の現場では、ノリがチームの結束を固め、売上を伸ばす。批判者たちが無視するこの効用は、会社を活気づける力だ。グローバルパートナーズの取り組みは、そんな可能性を示しているかもしれない。読者諸君も、自分の職場で小さなイベントを試してみてはどうか。きっと、日常が少し明るくなるはずだ。
【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。