求められるのは「積極的消極主義」
定年後は体力や気力が減衰し、収入も少なくなる。そうした撤退戦においては守りを固めつつ、新しい生活のあり方を模索する「積極的消極主義」が求められる。
そこで大切なのが、少し働いて賃金を得ることで、貯えが減るスピードを落とす「マイナスのミニマム化」だ。
幸いなことに少子高齢化が進む日本はどこも人手不足で、定年後でも趣味や嗜好で働き先を選ぶ幸せを享受できる。
日本の飲食チェーンやカフェ、ファストフード業界などは高齢者の雇用に前向きで、マニュアルもそれほど厳しくない。それゆえ定年後でもストレスを抱えることなく“ユルく”働き続けることが可能になった。
権力を行使することが好きなタイプには、駐車違反の切符切りをお勧めしたい。「ここに停めたらダメですよ」などと小さな権力をふるい、自己肯定感を高めながら賃金を得られるからだ。
他方、働く場所は外とは限らない。ネットを利用して、家にある不用品をメルカリやヤフオクで売るだけでそれなりの小遣い稼ぎができる。
模型づくりが趣味という人は、精巧に組み立てたプラモデルの完成品をオークションに出せば、意外なニーズがあって高値で売却することが可能だ。
ちょっとしたアルバイトやネットを使ったスモールビジネスができる環境と時間が十分に用意されていることが、日本に住むリタイア世代の「特権」でもあるのだ。(談)
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※週刊ポスト2025年11月21日号