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【高血圧、糖尿病患者を狙い撃ち】診療報酬改定に大きな影響力を持つ「日本医師会」の策略と政界工作 会員数17万人の巨大組織が行なう「医政活動」の中身

参議院に組織内議員を送り出す

 東京・文京区に本拠を置く日本医師会(日医)は「日本で唯一、医師を代表する団体」と自認する公益社団法人だ。会員数は約17万70000人で、診療所などの開業医と病院などの勤務医の人数は拮抗しているものの、日医の会長、副会長、常任理事ら執行部のメンバーは、ほとんど開業医で占められている。都道府県の医師会長の大半も開業医だ。

 日医に入会するためには各都道府県の医師会にも入らなければならず、たとえば大阪府や静岡県の場合、開業医だけが高額な入会金を支払い、初年度は年会費などと合わせて100万~300万円を負担している。このように開業医中心の団体である日医は自ずと開業医の利益を優先し、要望を実現するために様々な活動を行なうことになる。

 厚労省をはじめとする関係省庁では、日医の副会長や常任理事らが中心となって審議会の委員を掛け持ちで務め、日医の意に反する医療政策が実行されないよう厳しくチェックしている。

 特に開業医の既得権を損なうような政策には、自民党を中心とする政界から圧力をかけて実現阻止に動く。そうした医政活動は、国などから補助金を受けて公益活動をする日医に代わり、日医の政治団体「日本医師連盟」(日医連)が担う。

 日医連は3年ごとの参院選に毎回、自民党から候補を出馬させており、落選しなければ常時2議席を持つ。現在は元地方創生担当相の自見英子氏と今年7月の参院選で初当選した元日医副会長の釜萢敏氏が組織内議員だ。

 財務省の初の全国調査でも、2022年度の診療所の利益率は8.8%と、病院の5.0%を大きく上回った。調査では診療所が溜め込む内部留保が平均1億2400万円であることもわかった。

 私が調べた限りでも、開業医の診療報酬は病院より手厚い。その一例が1992年に新設された「特定疾患管理料」で、生活習慣病の診療に上乗せして請求することができた。この管理料は200床以上の病院は請求できない。

 最も患者数が多い生活習慣病関連の診療報酬は、診療所の収入の柱になる。実際、2022年度に医療機関に支払われた外来医療費のうち、高血圧は約1兆7000億円、糖尿病は約1兆2000億円と、2つだけで約2兆9000億円に上る。そのため、診療所に最も高く報酬が設定されていた特定疾患管理料は「開業医の聖域」と言われてきた。

 そこで厚労省は2024年度の改定で、頻回な診療による医療費のムダを削るため、月2回まで患者に請求できる特定疾患管理料から高血圧、糖尿病、脂質異常症の3つだけを外し、前述の生活習慣病管理料の【I】と【II】を新設して、月1回までしか請求できないようにした。

 さらに厚労省は請求要件として「患者の状態に応じ、28日以上の長期処方やリフィル処方が可能な旨の院内掲示をする」ことを加えた。政府関係者は、この改定で「開業医の聖域に初めてメスを入れた」と胸を張った。

 リフィル処方とは、同じ処方箋を最大3回目まで繰り返し使える制度だ。これが海外のように普及すれば毎月の診療代は最大3分の1になる。さらに長期処方にしてもらえれば薬局に支払う調剤報酬も減る。

 だが、私は取材を通じて、この院内掲示をせずに生活習慣病管理料を請求しているケースがあることや、Aさんの事例のように実態は【II】なのに【I】を請求して利益を得る開業医が珍しくないことを知った(この点について本誌・週刊ポストが日本医師会に見解を尋ねると、「生活習慣病管理料を含めて現在議論が進められているところであり、取材には対応することができません」との回答だった)。

 今年3月末に開かれた日医の臨時代議員会では、代議員が執行部に「生活習慣病管理料の【II】とリフィル処方の廃止」を政府に迫るよう求める一幕もあった。

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