ドローンから地味な装備も改良
防衛技術協会には今後の防衛装備に活用できる高度な技術を持つスタートアップ企業の参加も増えている。
脳神経科学の研究支援などを行なうアラヤもその一つで、同社が開発に取り組むのは、脳波を読み取りAIにかけることで、操作をせずにマシンを動かす技術だ。将来の戦場に応用できると注目されている。
石川エナジーリサーチが開発中の「無振動エンジン」はドローン、無人機の性能引き上げにつながる技術だ。振動がなくなれば、ドローンに搭載される精密電子機器の誤操作を減らせるし、より多くの重量を運搬できるようになる。
「ドローン迎撃」の電子戦技術を開発しているのはCYPHICという会社だ。攻撃してくるドローンのGPSを電波で妨害して落とすものだ。
ヒューマノイド・ロボットや四足歩行ロボット技術を研究している東大ベンチャー・Highlandersが手掛ける人が立ち入れない危険地帯で複雑な作業を行なう技術も、防衛装備への応用が期待される。
「こうしたスタートアップは防衛装備庁や経産省の施策と連携しつつ、防衛技術協会としても引き続き有望なスタートアップに伴走するような支援をしていきたい」(前出・渡辺氏)
一見すると地味な技術も日本の高性能な防衛装備を支えている。
防衛問題研究家の桜林美佐氏は弾丸、防弾チョッキ、戦闘靴も改良が重ねられてきたと指摘する。
「陸自の上級射手によると、旭精機工業など国産メーカーの弾薬は外国製よりバラツキが少ない。銃弾が狙った的を外せば、射手は照準を変えるが、バラツキがあるとまた当たらない。薬量や形状を限界まで均一にしているのが国産弾です。また、イラク派遣の時、カナダ軍兵士が防弾チョッキを着たまま川に落ちて溺死する事故が起きた。日本のメーカーはすぐに改良に取り組み、4か月後に紐を引くだけで脱衣できるクイックリリース型を出した」
自衛隊員の足元を守ってきたのが安全衛生のトップ企業、ミドリ安全だ。
「同社は50キロ行軍しても靴擦れしない靴を長年かけて研究開発し、戦闘靴2型をつくりあげた。蒸れるという声が上がると、今度は暑さ寒さに耐え、水が染みこまず、靴擦れせずに水虫にもならない半長靴の開発に取り組んでいる」(桜林氏)
最前線を担うことになる兵士の命と健康を守る。これも日本の技術の高さだろう。
※週刊ポスト2025年11月28日・12月5日号