経営者として一番重要なのは「自分だったらどうするか」
また、当時はアメリカのトップクラスの大学院でも、2年間で取り組むケーススタディはせいぜい20前後だった。だが、1年は52週、2年で104週ある。その2年間に毎週取り組めば、100のケーススタディができる。
それだけ繰り返し考えるクセをつければ、自身が経営者になった時にも、同じように取り組めば「答え」が見えてくるだろう。
無論、1週間で収集できる情報は限られているが、クラスメートとディスカッションしたり情報交換したりすることも認めている。実際の経営でも、先輩や同僚、スタッフと手分けして協力しながら進めるのだから、リサーチで他人を頼ることは何も問題はない。
むしろ、一番ダメなのは、誰の意見も聞かずに自分の考えだけで決めることだから、周囲に相談して意見を参考にするのはよいことであり、経営においては「カンニングOK」なのだ。
そして1週間後に、学生たち1人1人が自分なりの回答を提出した後で、教授である私自身も自分の考えたアイデアを学生たちに披露する。それを聞いた学生たちは、最終的に自分の回答の何が足りなかったのか、どうすればよりよい選択ができたのか“振り返り”を実施する。
経営者として最も重要なのは、「答えを解説する」ことではなく、「自分だったらどうするか?」ということだからだ。
その結果、生まれたのが「RTOCS」というまったく新しいケーススタディだったのである。
(大前研一・著『RTOCS 他人の立場に立つ発想術』より一部抜粋して再構成)
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。新刊『RTOCS 他人の立場に立つ発想術』など著書多数。